心の家路

ソブラエティのための道具90 (9)
90 tools for sobriety (9)

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2006/01/11 

90 TOOLS FOR SOBRIETY

ソブラエティのための道具 90

9 ) 電話を使いなさい。(事態が済んでからでなく、事態の進行中に)。
Use the telephone. (not just after the fact but during too.).


酔っ払って電話したことがありました。

「次のミーティングには酒を切ってきなさい。 自分で酒が切れなければ入院するしかないですよ」

助けを求めて電話をかけたのに、なんて冷たい言葉を吐く人だろうと思いました。
でも、考えてみると、酔っ払い相手に話をしてみたって、酒が抜けたころにはすべて忘れているでしょう。

「飲む前に電話をかけなさい」

(飲む前に電話をかけたら、飲めなくなってしまうじゃないか) と思ったのですが、考えてみると酔っ払って電話をかけるのは、誰かに 「飲んだ言い訳」 を聞いて欲しいだけなのかもしれません。 そして、その言い訳は、自分自身でも納得できかねるものなのです。

ある日、仕事を終えて帰宅してみると、妻が居ませんでした。 家人に聞くと「家出をすると言って、荷物を持って出て行ってしまった」と言うのです。 一晩家出してしまうのは、彼女の独身時代にもあったことだそうです。 「明日になれば帰ってくるだろう」と言われても、その時彼女は妊娠中でしたので、悠長に構えている余裕は、僕にはありませんでした。 とは言っても、どうしたらいいのか途方に暮れました。 車があるところを見ると、移動手段は徒歩か電車だと思われました。 「最終の特急電車で帰ってくるだろう」 と思って待っていたのですが、その時間を過ぎても帰ってきません。

時刻は夜半を廻りました。 帰るのは明日になるんだろう・・・と諦めて寝ようとしたのですが、いろいろと悪いことばかりが頭に浮かんで眠れません。 自分の意志で出て行ったんだから、警察に連絡するのも変です。
午前1時40分。 僕はスポンサーのお宅へ電話をしました。 呼び出し音が十数回鳴った後に、奥さんがでました。 眠そうでしたが、さして驚くでも、怒るでもなく、ご主人を起こしにいってくれました。
スポンサーもさすがに眠そうでしたが、僕の慌てた話をゆっくり聞いた後に、こう言いました。

「そういう場合には、自分のできることだけやって、あとはお任せだよ」

自分にできることが何なのか、考えてみても、そう多くありませんでした。 もし彼女が東京か名古屋で夜を過ごしているなら、今夜の僕にはどうしようもありません。 近くでも、どこか知らないところに泊まっているなら、場所も突き止め様もありません。 夜行の急行で帰ってきている最中だとしても、確かめ様もありません。
でももし、すでに最終の特急で帰ってきているものの、家に戻れず、かといって泊まるあてもなく、どこかで夜を過ごしているとするなら・・・。 僕は車に乗り込んで、駅の周辺と市内の大きな公園全部を調べてまわりました。 「可能性の低い、ばかばかしいことをしているのかもしれない」 と思いました。 それでも、他にできることが思いつかなかったのです。
もちろんそれは徒労だったのですが、戻る頃には 「できることはしたのだ」 という諦めに似た不思議な落ち着きがもらえ、眠ることができました。
翌日の昼、職場から自宅に電話をかけてみると、妻は帰宅して寝ているという話でした。

次にミーティングで会ったときに、結果をスポンサーに話をすると、彼は 「実は俺はあの後、心配で朝まで眠れなかった」 と打ち明けてくれました。 迷惑をかけた詫びを言うと、彼はこう言いました。

「あなたが(問題を)乗り越える手伝いができたのなら、私の一夜の睡眠なんて安いものですよ」

(なってカッコいい言葉だ)と思いましたとも。

幸いなことに、その後は夜中に彼を叩き起こす必要に迫られることはありませんでした(今のところ)。
でも、この一件以降 「ミーティング会場の外でも(僕が助けを求めるならば)仲間は手助けをしてくれる」 と信じられるようになりました。 そう信じられることは幸せなことです。

ミーティングに行くときだけAAメンバーになるのじゃなくて、24時間いつでもAAメンバーであることを、僕は自分に確認したのです。

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