心の家路

ソブラエティのための道具90 (10)
90 tools for sobriety (10)

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2006/01/11 

90 TOOLS FOR SOBRIETY

ソブラエティのための道具 90

10) ただ座っていないで、前向きに動いてごらん。宙ぶらりんの時間はあなたを台無しにしかねないってことも。
Be active - don't just sit around. Idle time will kill you.


「一人暮らしなのに、自宅でお酒を飲むなんて、信じられない。 淋しいじゃない」

僕に投げつけられた言葉は、ひどく僕のプライドを傷つけてくれました。
でも、それが普通の感覚なのでしょう。
それでも僕は混ぜっ返すしかありませんでした。 じゃあ、家族と夕食を食べながら、ひとり晩酌を飲んでいるオトーサンは淋しくないのか?
淋しいかもしれないし、淋しくないのかもしれません。
でも、確かなことは、僕はとても孤独で淋しかったということです。

なぜ、自分のアパートで本を読むのに、酒を飲む必要があったのでしょうか。 ビデオを見るのにも、パソコンに向かうのにも、いつもお酒が一緒でした。
どんなことにも「お酒を飲む」ことを絡めてしまう僕は、実は友人たちから次第に煙たがられる存在になっていました。 だからといって、酒を捨てて友人たちに交わっていこうとは思いませんでした。 それよりも、ひとりで飲むことを僕は選んだのです。

いつしか切れ目なく酒の匂いをさせるようになり、人々から敬遠されていることを悟った僕は、なおさら「自分ひとり」だけの世界へと向かっていきました。 自分を理解してくれる人が、身の回りに誰もいなくなり、その恐ろしい孤独を癒してくれる薬が、またアルコールだったのです。
酒を飲みながら楽しめたことが、酒を飲んでせいで楽しめなくなるほど具合が悪くなっても、僕は酒が手放せなくなっていました。

酒を手放しても、僕は孤独から解放されませんでした。 酒なしで何かを楽しむ能力も失われてしまったのです。 そして、退屈と孤独が、僕を簡単にアルコールに引き戻してしまうのでした。

「いままでお酒を飲んでいた時間を、ただテレビの前に座って過ごしているだけじゃ、お酒は止まりませんよ」

何かやることがあるのなら良いのでしょうが、お酒を止めた僕にはやることが多くなく、しかもお酒なしでは何も楽しくなかったのです。 かといって、人に交わるのは、僕には苦痛でしかありませんでした。 しかも、お酒の話題は僕に耐えられない苦痛だったのです。 なにしろ、その話題が僕を人から遠ざけた直接の原因だったからです。 酒を止めることの「やりきれなさ」を訴えても、それを受けとめてくれる人は、身の回りにはいませんでした。 人と酒のことを話し合うなんて、とんでもないことでした。

しかし、「僕はとても孤独で淋しかったし、いまもそうなんです」という言葉に、「俺もそうだったよ」・「私もそうだった」という言葉を貰ったときに、何かの変化が始まったのでしょう。

「人間の心を癒すことができるのは、人間だけです」

世間が僕を排除して孤独にしたのではなくて、僕が好んで孤独を選んできたのでした。 孤独を癒すのは簡単で、自分から求めて進んでいけばいいだけだったのです。 僕の恐怖は「子供が知らないところへ行くのを怖がる」心理でした。 だから、笑顔と励ましもとても必要でした。
半年ほどすると、いろんなことが楽しくなり始めました。 そしていつしか、退屈な時間すら大切な人生の一部になってきました。

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