心の家路

ソブラエティのための道具90 (12)
90 tools for sobriety (12)

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2006/01/11 

90 TOOLS FOR SOBRIETY

ソブラエティのための道具 90

12) 昔の決まりきった日課や習慣を変えてごらん。
Change old routines and patterns.


「私たちはアルコールのない世界へ逃れることはできない」

だから、今までどおりの生活を続けていく中で、飲まないでいなくてはならない。僕はそう思い込んでいたのです。酒を止めるために、飲んでいた頃となるべく違った行動を取ろうとする人たちを、僕は内心で軽蔑していました。しかしそれは、アルコールに対する無力を認める行動とは、正反対の考え方だったようです。

最初にAAにつながって、およそ半年間飲まないでいることができました。しかしそれは、たまたま立ち寄ったコンビニエンスストアに酒が置いてあった、という簡単な理由で破綻してしまうのです。そしてそれが、精神病院への再入院につながる飲酒の始まりでもあったのです。

退院して再びAAのミーティングに通うようになった僕は、帰りに立ち寄るコンビニを選び、アルコールを置いていない店を利用するようにしました。たとえそれが遠回りであったとしてもです。

「私は財布の中にAAでもらったメダルを入れています。あるときどうしても飲みたくなってビールの自動販売機の前に立ったのですが、小銭を取り出そうと財布に指を入れたら、メダルに当たったのです。それで気が付いて飲まずにすみました」

仲間のそんな話を聞いても、「財布にメダルを入れておくなんて、ばかばかしい限りだ」としか思えなかったのです。しかし、

「お前は先行く仲間の持っているものを手にするためなら<なんでもする>という気になったのではないか?」

そう自分に言い聞かせて、僕も財布にメダルを入れることにしました。
当時の僕はタバコを吸っていました。普段はタバコを買い溜めしておくのですが、その晩はあいにく切らしており、一箱でも買って帰らなくては、苦しい夜を過ごすことになりそうでした。我が家から一番近いタバコの自動販売機は、近所の酒屋の前にありました。酒屋ですからビールやワンカップの販売機もあります。
そこでタバコを買うたびに、

「いつか自分は誘惑に負けて、隣の酒の自動販売機の前に立ってしまうのではないか」

という不安に駆られていたのですが、その晩はそれが現実になってしまいました。しかし、財布の中のプラスチックのメダルは、僕を十分正気に(?)戻してくれたのです。それ以降、僕は自分の意志を試してみるような行動は慎むようにしました。

ともかく、アルコールが自分から遠ざってくれるまでは、自分からアルコールに近づくような行動は避けるようにしたのです。酒席もなるべく遠慮し、夕方の通勤ルートは繁華街を迂回し、タバコはタバコ屋まで足を伸ばし、酒しか飲まない友人のところにはウーロン茶を持参ででかけました。

酒を止めはじめの頃は、無意識のうちにも「酒を飲むのに便利な」習慣がたっぷり残っているものです。ここでも謙虚さが役に立つと知りました。知らない人間が見たらこっけいな行動に見えるかもしれませんが、それまで何年も(こっけいどころか)狂った行動をしてきた人間ですから、気にしたことはありません。

そうして、一見ばかばかしいような行動の積み重ねが、僕のターニングポイントを成していったのでしょう。

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