心の家路

ソブラエティのための道具90 (14)
90 tools for sobriety (14)

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2006/01/11 

90 TOOLS FOR SOBRIETY

ソブラエティのための道具 90

14) 孤独は避けなさい。
Avoid loneliness.


またHALT(※)シリーズです。

飲んでいた頃、楽しげな大勢の人たちに囲まれていても、僕は実はとても淋しかったのです。

「本当はこの人たちに受け入れられていないのではないか」

友人達にとっては僕は「困ったヤツ」であり、仕事場では「できないヤツ」であり、家庭では「トラブルメーカー」として疎まれているのじゃないか? という疑いが心の隅から無くなることはありませんでした。

そして、アルコールはその疑いを吹き飛ばしてくれる魔法の薬でしたし、皆がそれを飲んでいるときほど、素晴らしい時間はありませんでした。しかし、いつしかそれに頼りすぎ、昏睡とブラックアウトのおかげで、自分が何をしたかも分からなくなった時、僕は「周囲から疎まれる自分」を確信しました。しかし、信頼を取り戻すほど長く酒を止めていられなかった自分は、ふたたび酒を飲むことしか選べませんでした。

やがて、強制的に酒を手放さなければならなくなったときに感じたのは、誰にも理解してもらえないほど強い淋しさだったのです。だからこそ「こんな信用されずに疎まれた存在でいたくない」という言い訳で酒に戻っていったのでした。

AAのミーティングに通いだしたときに、「自分の感じた淋しさは、決して僕だけのものではなかったし、誰にも理解できないほど深くは無かった」と感じることはできました。しかし、僕の虚栄心があまりに大きかったせいでしょうか、それとも「自分が真に受け入れられるはずが無い」と思い込むほど猜疑心が強くなっていたのでしょうか、AAの仲間の差し出した手を握り返すことが、僕には出来ませんでした。

夜8時といえば、ミーティングが開かれている時間帯です。そんな時間帯に酒を飲みながら、

「今ごろみんなはミーティングをやっているのだ」

と思うと、飲んでいる自分が少しだけ誇らしく、そして孤独な自分が果てしなく情けないのでした。

病院から戻って、「AAの仲間に入れてください」とミーティングで言ったときに、「僕が居てよい場所」が僕にも与えられたのです。そして「居てよい場所」はそれからも増えつづけていきました。僕は仲間に電話をし、手紙を書き、メールを打ち、直接会い、そして何よりミーティングを一緒にしました。

いつしか、僕はたいてい「居るべき場所」に居るようになりました。それは家庭であったり、職場であったり、車や電車の中で会ったりします。独りぼっちでいても、どこかに人とのつながりを感じています。そして、それが疑わしくなったときは、本当に孤独かどうか確かめてみることができます。

それでも、もう一度AAから離れて「孤独」を試してみようという気にはなれないのです。
見知らぬ人たちと付き合うことなど、考えられなかった自分にとってのターニングポイントは、自分から孤独を捨てる勇気だったのです。


HALT : Hungry(空腹)・Angry(怒り)・Lonely(孤独)・Tired(疲労)の頭文字をつなげた言葉。

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