心の家路

ソブラエティのための道具90 (19)
90 tools for sobriety (19)

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2006/01/11 

90 TOOLS FOR SOBRIETY

ソブラエティのための道具 90

19) 気楽にやりなさい。
Easy does it.


時間だけが解決してくれる問題というものがあります。

僕が病院に入院している最中に、AAのメッセージ活動で来てくれたメンバーは、飲まないでいる期間がもう10年を越していました。彼の表情や、物腰や、言葉から、彼のアルコールの問題はすでに過去に解決されてしまったことが見て取れました。
僕は彼に嫉妬し、そしてまた「早く彼のようになりたい」「早く回復したい」という願いを持つようになりました。それは依存症の患者が「良くなりたい」と願う、とてもよい感情だったと、今振り返って思います。

ところがその感情は、退院してAAの活動に参加してみると、先を行く仲間に追いつきたい、追い越したいという願望に変わっていきました。

仲間は、いつかは飲酒欲求も遠ざかると言ってくれます。でも「今すぐにでもこの飲酒欲求を取り除いて欲しい」と願ってしまうのです。酒で失ってしまった信用も、少しずつ戻ってくるとは言われましたが、今すぐにでも取り戻したくてたまらないのです。

(酒のせいで僕は10年以上を棒に振ってしまった。だからこれからは、一日たりとも無駄にはできない)

そんなふうに気負った姿勢は、AAの仲間にすぐ見抜かれてしまいました。

「あんたが10年経てば、相手は20年だ。そりゃ10年の差はいつまで経っても埋まらんけど、今のあんたにとってみりゃ、10年のソーバーも20年のソーバーもかわりゃせんやろ」

僕は10年を1年に縮めたいという、自然の摂理に(神の意思にも?)反した願望で、自分で自分を苦しめていたのです。10年回復するには、10年かかる。その単純な事実がなんとか僕を納得させてくれました。

今でも、「これを今日中に仕上げてしまわなくては」という思いに振り回されていたり、面倒な作業から早く開放されようと必要以上にがんばっていたり、前の遅い車にクラクションを鳴らそうとするたびに、「気楽にやろう」と自分に言い聞かせなくてはなりません。

どんなことであれ「こつこつやって積み上げる」しか方法がなくて、じれったいけどそれしかないのだと、いつも言い聞かせているのです。

「ねえ、もっと気楽にやろうよ」

とAAの仲間から言われるとき、僕はため息をついて、この大切なスローガンを忘れていたことを認めざるを得ないのです。

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