心の家路

ソブラエティのための道具90 (25)
90 tools for sobriety (25)

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2006/01/11 

90 TOOLS FOR SOBRIETY

ソブラエティのための道具 90

25) 気分を変える薬はすべて避けなさい。そして薬はぜんぶラベルに目を通すこと。
Avoid all mood-altering drugs, read labels on all medicines.


およそ3年ほど、いわゆる「昔風」の精神科医の元に通っていたことがあります。
診断名は「うつ病」でありました。僕が酒をいくら飲んでも「眠れない」と医者に訴えたのが診断の理由だったようです。じゃあ一日にどれぐらい飲むのかという質問に、僕は正直に答えられませんでした。「一合か二合です」というのは嘘で、実際には日本酒だったら3〜5合、焼酎だったら4合ビンが一日半で空いていました。でもそのことは医者には内緒だったのです。

さまざまな薬を出してもらいましたが、一番ありがたかったのが睡眠薬です。自分でも酒を飲みすぎるのが問題だと感じていました。眠れないと明日に差し支えるから寝るために酒を飲んでいるのに、その酒のせいで翌日がひどいことになってしまうのです。
睡眠薬を使って、翌日の吐き気や頭痛や下痢に悩まされることなく生活できるという見通しに、僕は喜びました。ただ医者が、

「お酒と一緒に飲むのはダメです」

と言ったのが気にかかりました。

最初のうちこそ睡眠薬でよく眠れたものの、すぐに耐性ができてしまい、だんだん強い薬に変えてもらいました。薬を飲んでしばらくすると、なんとなく「とろん」とした気分になって、それは酒が与えてくれる感覚とちょっと似ていました。
しかし悲しいかな、眠れる前にその感覚は去ってしまい、眠れないと悩みだけが残りました。もんもんとした挙句、倍飲めば倍効くだろうと、翌日の分の薬も飲んでしまいます。当然、次の日も薬なしで眠れるわけはありませんから、また二日分飲みます。それでも眠れなければ3日分です。そして、二週間分の処方薬を、一週間たらずで使い切ってしまうわけです。
薬が足りなくなって、仕方なしに医者に行くと、

「決められたとおり飲まなくちゃだめです」

と怒られてしまいました。そんなことが続くと、医者に行くのが嫌になって、薬がなくなると代わりに酒で眠るようになりました。そして気がつくと、酒と薬の両方を一緒に飲むようになっていました。最初の精神病院への入院を経験するのは、その半年後のことです。

現在お願いしている精神科医は依存症に詳しい人で、うつ病の薬は出してもらえても、「気持ちが良くなる薬」は出してくれません。理由は依存症だからです。内科医にも依存症だと話してありますので、風邪でかかっても、ビタミン剤と解熱剤しか出してくれなくてがっかりしたりします。

街中の内科医をだまして精神安定剤を出してもらうくらいわけはありません。薬局でも同じです。しかし、それは危険な道です。
僕の求めているものは酒ではなく、酒がもたらしてくれる「酔い」です。薬に酔いを求め、次に薬から酔いが得られなくなったら、次は酒に走るでしょう。

僕は医者ではないので、自分以外の人が、薬を飲むべきか止めるべきかは決められません。でも、自分のことについては自己責任だと思っています。

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