心の家路

ソブラエティのための道具90 (27)
90 tools for sobriety (27)

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2006/01/11 

90 TOOLS FOR SOBRIETY

ソブラエティのための道具 90

27) 酒を飲む場所や行事は避けなさい。
Avoid drinking situations/occasions.


AAで酒が止まって、最初にスリップ(再飲酒)した酒は、自分で買ったものでした。いつも立ち寄っているコンビニで、自分で買ったものでした。酒を置いていないコンビニに寄ればもっと安心だとは思っても見ませんでした。

それから酒をやめたり飲んだりを繰り返して、なんとか量をコントロールしようと苦労していたときに、父が突然亡くなりました。さすがに酒を手放そうと思ったものの、葬式の当日は禁断症状が一番激しい日でした。「悪い酒飲み」だと親戚中に知られていてる僕は、さすがに飲むわけにもいかず、震える手で人様のコップにビールを注いでまわっていました。
父の死を悲しいとも思わず、ただ目の前のビール一杯を飲みたい衝動をこらえるのに必死でした。そしてその晩、自分の部屋で僕はすっかり酔っ払いました。

こんなことをしていちゃダメだと誓って、医者の力を借りてなんとか3週間やめていると、こんどは自分の結婚式がやってきました。三々九度の酒を飲むわけにはいかないので、「あれを水に変えてくれ」と言ってみたものの、「大切な神事なんだからやっぱりお神酒でないとダメだ」と言われ、僕は途方にくれました。

でも、そんな心配は無用でした。三々九度の杯は唇をつけただけで済ましましたが、披露宴では、人々が次々に僕のグラスにビールを注ぎに来るのです。ホテルの人は、「大丈夫です。まったく飲めない新郎さんもいますから、グラスに唇だけつけて、あとはテーブルの下のバケツに空けても失礼にはなりませんよ」とアドバイスをしてくれました。けれど僕が唇をつけるだけじゃなくて、ごくりと一口ビールを飲むようになるのに、そんなに時間はかかりませんでした。衆人注目の中でスリップしたのは、あれが唯一の体験です。

精神病院に入院中に、僕のいとこが結婚式をすることになり、僕にも招待状がやってきました。誰も僕にそれに出席しろとは言いませんでした。当然といえば当然の話で、アルコールが原因で入院しているのに、外出して酒の席に行って来いと言う人は誰もいないでしょう。ただ欠席するわけにも行かないので、妻に行ってもらういました。

退院してミーティング帰りにコンビニに寄るときも、酒の売っていない店を選ぶようにしていました。自分で自分をコントロールできるか、まったく自信がなかったからです。

そんなころ、妻の祖母と大叔母が相次いで亡くなりました。弔いごとで人手が要ると言われたので、行かないわけにはいきませんでした。ただ、田舎の弔いですから、男衆と一緒にいると酒に付き合わされてしまいます。僕は女衆に混じって台所で洗い物をし、一緒に食事をしてすごしました。「あいつは女衆に混じって何がおもしれーんだか」と揶揄されましたが、つまらないプライドより、僕は自分の身を守ることで精一杯でした。

ある日、妻と僕の母の3人で食事をしたことがありました。簡単なコース料理だったのですが、悪いことに食前酒が出てきてしまいました。

「お前はこれはダメだ」

と母にそのグラスを取り上げられたとき、「そんなこと、言われなくたって大丈夫だよ」と口答えしていたのは、やっぱりプライドが傷ついたからでしょうか。

何年か経って、僕は転職をしました。新しい職場には古い友人がいました。僕の歓迎会の席でその友人が、

「あなたは今日は絶対に飲んじゃいけません。絶対ですよ」

と(全員に聞こえるような)大声で忠告してくれました。
僕の心は穏やかではありませんでしたが、彼が僕の過去を良く知っていること、そしてこの場では善意で、僕の将来を心配して言ってくれたのだと考えるようにしました。僕は彼の思いやりだけを素直に受け取って、つまらない自尊心は捨てることにしました。そうできたのもAAミーティングに出続けたおかげでしょうか。

そして現在も、無用な飲み会には出ないようにしています。都合上どうしても出席しないとまずい酒の席があっても、そのことを悩んだりしないことにしています。それよりも、その日が来るまでの一日一日を、飲まずに過ごすことのほうが、ずっと大切なのだと気づいたからです。

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