心の家路

ソブラエティのための道具90 (29)
90 tools for sobriety (29)

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2006/01/11 

90 TOOLS FOR SOBRIETY

ソブラエティのための道具 90

29) ビッグ・ブックを読もう。
Read the Big Book.


その本は、精神病院のケースワーカー室の本棚に置かれていました。
紺色の表紙には金文字で Alcoholics Anonymous と英語で書かれ、日本語で『無名のアルコール中毒者たち』、そして「アルコール中毒からの回復」と書かれていました。

何人の人に読まれたのか、背は崩れ、小口は手垢で汚れていました。女性の寄贈者の名前が表紙の裏に書かれていました。
第三章と第五章の冒頭は、読みなれたミーティング・ハンドブックの文章とまったく同じで、さらに探してみると第六章の文章も見つかりました。僕はようやくその本が、ビッグブックと呼ばれる「AAの本」だと気がついたのでした。

病院のベッドに寝転がって、「医師の意見」から読み始めました。「ビルの物語」では、友人がもたらしてくれた良いニュースのおかげで酒がやめられたビルが、心底うらやましく感じました。僕はといえば、退院してもまた飲んでしまうのはほぼ確実で、それを防ぐ手段はありそうもありませんでした。

「以来、僕は一滴も飲んでいない」

そう高らかに宣言できるビルが、あまりにもうらやましく、まぶしく感じられました。
酒をやめてもまた飲んでしまうジムの話、信号無視して道路を渡ることに情熱を燃やす男の話、そしてすべてがうまくいっていたのに飲んでしまったフレッドの話。とりあえず覚えたのはその3つの話だけでした。
もちろん第四章(信仰の話)は読み飛ばしましたし、第七章(12番めの提案)は「そんなことできるかよ」であり、一番笑って読んだのは後半の日本人の個人の物語でした。
僕は本に書かれた住所のオフィスへ手紙を書き、その本を一冊送ってもらいました。

退院した僕は、地元のAAについてもっとよく知ろうとしました。
結果わかったことは、現実のAAは本の中のAAとずいぶん違っていること。県内のAAメンバーはどう数えても10人おらず、その中でもソブラエティが数ヶ月のメンバーは、狂ったように毎日ミーティングに出ていること。どうやら聞く耳を持った人にはそう薦められるものらしいこと。などでした。

僕は残念なことに(?)毎日ミーティングに出られる幸運には恵まれませんでした。ですが、「自分には毎日のミーティングは必要ない」と思っているビギナーたちには、再飲酒の運命が降りかかる確率が高いことも分かってきました。
そこで、ミーティングの代わりとして、僕は夜寝る前に布団の中でビッグブックを読むことにしました。それは睡眠障害を持っていた僕にとって、うってつけの習慣でした。

「本を読んでも回復しないよ」
「本はミーティングの代わりにはならないよ」

AAの仲間たちはそう言いましたが、僕には電話をかける相手も、手紙を書く相手もなく、ミーティングの代用品はビッグブックだけでした。

こうしてビッグブックの文章は、僕のソブラエティの基礎の一つになりました。

本はミーティングの代わりにはならないことは確かだと思います。でも、ビッグブックとそのプログラムは、ミーティングがない晩でも(昼でも)僕を助けてくれました。今僕は、AAに真剣に取り組んでみようとしている人に、このアルコーホーリクス・アノニマス(AA)という本をプレゼントするようにしています。

翻訳が改まって、表紙の「アルコール中毒からの回復」という文章も改まりました。

幾万もの、実にたくさんの人々がアルコホリズムから回復した。本書は彼らがどのように回復したかを語るものである。

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