心の家路

ソブラエティのための道具90 (31)
90 tools for sobriety (31)

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2006/04/24 

90 TOOLS FOR SOBRIETY

ソブラエティのための道具 90

31) 感謝の気持ちを言葉にしてごらん。もしそれができないなら「感謝表」とでもいうものを書き出してごらん。
Be grateful and when not make a GRATITUDE list.


「あなたが正しく、私が間違っていた」

という文章を初めて読んだとき、僕は「私が正しく、あなたが間違っていた」と読み違えてしまいました。その間違いは無意識だったかもしれませんが、僕の心の中を正確に表していたのでしょう。
飲んでいた頃、常に自分は正しく、間違っているのは周囲であり、世間でありました。常に自分は人並み以上の苦労を背負っているのであり、だから恩を受け感謝されて当然なのであり、暖かく接しられて当然なのでありました。しかし、周囲の評価はまったく逆で、僕は当てにならない人であり、トラブルメーカーであり、怒りをこらえる対象であり、できれば関わり合いになりたくない人でありました。
正当に評価されない身を嘆き、恨みと自己憐憫を癒してくれる薬がアルコールでした。

飲むのをやめても、自分こそが正しいのであるという考えから自由になれたわけではありませんでした。自分が他の人より優れていることを証明していないと、自分の存在の価値がないと思いこんでいました。
だから、間違いを指摘されたときは、僕の存在意味を否定されてしまったかのように動転し、相手を恨み、失地を挽回するために必死でがんばった挙げ句に疲れ果ててしまうか、するべきこと放り出してふて腐れてみせるのが精一杯でした。

感謝をするということは、慣れない人間にとっては、とても苦痛なことです。「ありがとう」という言葉を口に出そうとするだけで、背筋が凍る思いをすることになります。でも、そんな自分でも、

(こんな時にはきっと感謝の言葉を口にするんだろうな)

と思える場面が生活の中にあります。それを黙ってやり過ごしてしまうと、後に(さっき、ありがとうと言えば良かったな)という後ろめたい気持ちを残してしまいます。いや、そんな後悔はしてはいけないんだ。自分は優しくされて当然の人間なんだから。そう思うのをやめて、次の機会にはきっと、ありがとうを言うんだと心に決めます。

実際に実践してみると、感謝の言葉は相手の心を暖めるのではなく、自分の心だとわかります。
不完全な自分だからこそ、できないこと、忘れていること、間違えていること、得意になりすぎていること、誰かを責めていることがあるのであり、それを正し助けてくれる人があってこそやっていける。だから自分が人より優れていないことが証明されたからといって、持つべき感情は恨みや自己憐憫ではなく、感謝だということになります。

だからと言っていつでも感謝が出来るわけでもありません。「感謝しない言い訳」なんて、いくらでも思いつくことができるのが自分です。でも、自分の考えがいつも正しくて、感謝の必要がない生き方を続けていけば、いずれはアルコールでしか癒すことの出来ない感情が溜まっていくのは間違いありません。

感謝の気持ちのない「ありがとう」を言うのは実は意外と簡単です。反対に、感謝の気持ちがあるのに、それを言葉に出来ないときもあるものです。面と向かって、自分の至らなさを認めるのを、プライドが邪魔をしてしまうのでしょう。
AAの提案は、いつだって「表を作る」ところに至るのでしょうか。残念なことに「感謝の表」を作る作業はまだ出来ず、心の中で(感謝しておこう)と思うだけの自分であります。

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