心の家路

ソブラエティのための道具90 (34)
90 tools for sobriety (34)

ホーム > ソブラエティのための道具90 > 34

2007/02/19 

90 TOOLS FOR SOBRIETY

ソブラエティのための道具 90

34) 顔を向けなさい! あなたは、アルコール、人々、場所や物事に対して無力なのだから。
Face it! You are powerless over alcohol, people, places and things.


AAに来て最初の頃は、アルコールに対して無力である事実を受け止めるのに精一杯でした。
無力を認めることは、敗北を認めることです。敗北は実に嫌なものでした。

僕は、自分がコントロールできるものが好きでした。たとえば、部屋が片付いていても、散らかっていても、自分で選んだ結果であれば、それほど気になりません。誰かが勝手に片付けたり、勝手に散らかしたりすれば、腹を立てました。
自分の能力を認めてくれる人は好きで、認めてくれない人は嫌いでした。認めてくれない人には、僕の気持ちが伝わらない、そう思っていたからです。
自分をよくコントロールできた人が、社会で成功するんだと信じていました。だから、僕に必要なのは、無力を認めることではなく、自分をよくコントロールすることだと思っていました。

でも、アルコールに勝てないことは、AAに通うにつれ、次第にはっきりしてきました。

ある時、AAミーティング場に向かうのに、いつもと違う道を選びました。なんでそんなことをしたのか、憶えていませんが、ともかく僕の車は夕方の渋滞に巻き込まれてしまったのです。これではミーティングに大遅刻してしまうと思った僕は、無闇に腹を立て、イライラが始まりました。
でも、そのイライラは特別なことではなくて、僕はいつもイライラしていたのでした。たまにイライラしていないときは、イライラに疲れてぐったりしているだけでした。
僕はそのイライラに「酒が飲めなくなってリラックスできなくなったからだ」と理由をつけて、勝手に納得していました。

さて、ミーティングに遅れて着いて、「今日はこんな調子で、ほんとにイライラしちゃってるんですよ」という話をしたら、その晩のみんなの話が

「アルコール以外の、全てのことに対しても無力だ」

という話ばかりになってしまいました。

遅刻しそうだからって、赤信号を青に変えることはできないし、お金がないからって、来月から収入を倍にすることもできません。妻や上司が冷たくても、簡単に気持ちを変える方法もありません。気に入らない話をする人がいても、口を閉じさせるわけにもいきません。

いろんなことをコントロールしたい気持ちは、良い結果を出したい良い動機から来ていると考えていました。でも、僕は自分が原因で失敗したことはすぐに許せても、誰か他の人が原因の失敗はなかなか許せません。それは良い結果を出したいわけじゃなく、結果を自分でコントロールしたいだけなのでしょう。

力が及ぶ範囲が大きければ大きいほど、幸せになれると思っていました。出世したり、お金持ちになったり、有名になったりって、そういうことでしょう? でもそれは幻想で、僕はイライラしたり、疲れ果てたりしているだけでした。

「でも、そのことをいつも忘れちゃうんだよね」

僕もまったくそのとおりで、相変わらずいつもイライラしています。自分が無力だという事実を忘れ、自分以外のものを変えようとして、無駄に消耗を繰り返しています。たまにイライラせず調子が良いときというのは、物事をあるがままに受け止められているときなのでしょう。

次へ