ビル・Wに問う (21) AA第三の男

『ビル・Wに問う』の第21回です。


Q21:AA第三の男ビル・Dとはどのようにして会ったのですか?

A21:ドクター・ボブの家に滞在していたある日、彼が私に、「私たちが自分を守るためには、もっとたくさんの飲んだくれに働きかけたほうが良いと思わないか?」と言いました。私はそれは良いアイデアだと思い、結果として彼が市立病院に電話をかけたんです。彼は飲酒のせいでその病院での評判をずいぶん落としていましたが、婦長を呼び出して、彼女にこう言いました。「ニューヨークから人が来てね、アルコホリズムの新しい治療法が手に入ったんだ」。とても親切なこの看護師はこう言いました。「あの、先生はその治療法をご自分で試されたんですよね」と。それから彼女はダンディな候補者が一人いることを教えてくれました。その男は看護師の目を殴って黒あざを作り、拘束されていました。ボブはこう言いました。「彼をベッドに入れてやってくれ。少し良くなったら、彼を個室に入れてくれ。私たちはすぐに行くから」

The Man on the Bed
The Man on the Bed, by Robert M., from Box-4-5-9, Spring 20121)

しばらく後に、ドクター・ボブと私が見たものは、私たちがこれまで何万回も見てきた光景であり、また神が望むならば、これからも何十万回も見ることになるはずの光景です。それは、自分が良くなれることをまだ知らないまま、ベッドに横たわっている男の姿でした。

そして、後で明らかになりますが、ベッドの上の男はまったく楽天家ではありませんでした。多くの飲んだくれと同じように、彼も「私は違うんだ。私は難しいケースだ」と言いました。「私に向かって宗教の話はしないでくれ。もう信仰心は持っているんだ。かつては教会で助祭を務めたこともあるし、まだ神への信仰を捨ててはいない。だが、神が私に何もしてくれていないのは一目瞭然じゃないか。神は私に目をかけちゃくれない。ともあれ、明日の朝も会いに来てくれ。あなたがたも同じように辛い経験をしたから、私に関心があるみたいだが」 もちろん、私たちはあのシンプルなやり方を説明しました。もちろん、私たちが得た解放について話もしましたが、私はまだ数ヶ月、ボブもたった数日でしたから、彼はそれほど感銘を受けませんでした。彼は言いました。「私は自分で長くやめていたたこともある」と。

次に私たちが訪問して部屋に入った時、彼の妻がベッドの足下に座って夫にこう言っていました。「あなたにいったい何が起きたのかしら。すっかり違って見えるわ」 彼は言いました。「ほら彼らが来た。これが私を理解してくれた人たちだ。彼らも大変な苦労してきた人たちなんだ」 彼は、夜の間に希望がやってきたこと、それから私たちのシンプルなやり方を試してみたことを、早口でまくしたてました。何かが起きたこと、明るさの感覚、無事になったという感覚、そして解放されたという感覚がやってきた、と彼は語りました。

この第三の男2)は、妻にこう言いました。「私の服を取ってきてくれ。ベッドから出て、ここを出ていくぞ」 そうしてAA第三の男はベッドから起き上がると、その場所を出て、二度と飲みませんでした。その時は、私たちの方はいったい何が始まったのか認識していませんでした。もちろん、それがAAの始まりだったのだ、と今の私たちは理解しています。本質的なプロセスはまったく同じであり、神の恩寵はその後も絶え間なく続いてきました。(イリノイ州シカゴ、1951年2月)。


  1. このフルカラーの油絵は、Grapevineの1955年12月号のセンター見開きページに掲載された。たいへんな人気を得たため、四色刷のプリントが別売りされた。作者のロバート・M(Robert M.)はGrapevineのボランティアイラストレーターで、1956年にこの絵をAAの共同創始者ビル・Wに贈った。ビルはそれへの感謝の手紙に、「あなたが描いてくださった『ベッドの上の男』の絵は、ベッドフォードヒルズの私のスタジオの壁に掛けてあります。・・・この絵を見るだけで、AAの真髄と本質を知ることができます」と書いた。(拙訳) ―― AA, Box 4-5-9 – News and Notes from the General Service Office of A.A., Vol. 58, No. 1, AAWS, 2012 []
  2. AA第三の男ビル・Dは、ビッグブックの第十一章に登場する(pp.227-231)。また、彼の体験記「AA第三の男」の日本語訳は『アルコホーリクス・アノニマス 回復の物語』Vol. 1に掲載されている。 []