ビッグブックのスタディ (66) さらにアルコホリズムについて 1

前回、スタディの記事を載せたのが7月中旬でしたから、2カ月ぶりの更新となりました。その間に、付録Cとユングジェームズのエントリを追加してますが、スタディの記事は久しぶりです。更新が滞ったのは、仕事が忙しかったからです。記事を数本書きためておいて、忙しい時でも更新が途切れないようにしていたのですが、今回はそれらをすべて使い果たしてしましました。おそらく、今後もしばしば更新が止まると思われます。

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さて、今回からビッグブックの第三章に入ります。

ステップ1

第三章はステップ1を扱っています。ステップ1で私たちは、自分が(本物の)アルコホーリクであることを認めます。では、何をすれば、自分がアルコーリクであることを認めたことになるのでしょうか? そして、ステップ1に取り組むことで、私たちにどんな結果がもたらされるのでしょうか?

アルコホリズムという病気は、アレルギー強迫観念の組み合わせです。それについては、「医師の意見」・第一章・第二章を通じて、繰り返し説明がありました。自分がこの二つを持っていることを認めれば、それがすなわちアルコホーリクであることを認めたことになります。しかし、この二つが自分に備わっていることを認めるのは、それほど容易たやすいことではありません。

どちらかと言えば、アレルギーの存在のほうが認めやすいと思われます。アレルギーを認めることは、自分はもう酒を安全に飲むことはできないと認めることですから、その点は残念でしょう。しかし、飲みさえしなければ、もう酒に関するトラブルが起こることはない、という点に希望があるからです。

アレルギーの存在を認めた人は、もう二度と飲まないと決意することになります。ビル・Wも、p.8で彼が断酒を決意した瞬間をこう述べています:

ぼくは目が覚めた。こんなことはもうやめなければならない。一杯も飲んではいけないのだ。もう二度とアルコールには手を出さないと決心した。ぼくはそれまでにも調子のいい誓約書をゴマンと書いていたが、妻は今度こそは本気らしいと喜んだ。事実、ぼくは本気だった。1)

しかし、どれほど本気で決意しても、強迫観念が起きてくるとアルコホーリクはあっさり酒を飲み始めてしまいます。ビルは何度も断酒に挑戦しましたが、そのたびに再飲酒して飲んだくれに戻る、という結果に終わりました。しまいには彼も、自分の力で強迫観念に打ち勝つことはできないことを認めざるを得なくなりました。

強迫観念が起きてくれば「必ずまた飲む」(p.61)わけですから、アルコホーリクは酒をやめることができない(少なくとも自分の力では)ということになります。私たちのアルコホリズムは解決不能の問題なのです。その事実はビルに絶望をもたらしました

ぼくが自分を哀れんで落ち込んでいたひどい泥沼の中での、その時の孤独と絶望はとても言葉では言い尽くせない。浮砂は八方から流れ込み、押しつぶされそうだった。ぼくは闘いの相手の正体をつかんだ。手も足も出なかった。アルコールが、ぼくの支配者だった。2)

ステップ1には希望は含まれていません。だから、ステップ1で身体の病気(アレルギー)と精神の病気(強迫観念)を認めた人には、絶望がもたらされます。ビルほどの深い絶望ではなくとも、少なくとも暗い、嫌な気分になるはずです。

医学は解決になるのか?

では、医学の力によってこの問題に解決をもたらすことはできないのでしょうか?

まず、AAはすべてのアルコホーリクが絶望的だと主張しているわけではありません。そのことは、すでに第52回で取り上げました。AAはアルコホーリクには一つのタイプしかないとは主張していません。適正飲酒に戻れる人がいることも否定していません。ただ、アルコホーリクのある種の類型には、自力での断酒は達成不能だという事実を指摘しているのです。そして、AAが「本物のアルコホーリク」と呼ぶこの類型は、コントロールされた飲酒に戻ることもできなければ、断酒を続けることもできません。それを「アルコールに対して無力である」と表現しています。

第23回で紹介したとおり、アルコール依存症であっても、適正飲酒に戻れる人たちがいるのは事実です。また、入院や通院、デイケア通いなどの医学その他の助力を得て、自力で断酒が続けられる人たちもいます。それらの科学的事実と、AAの「アルコホーリクは自力では酒をやめられない」という主張の間に矛盾はありません。AAがそう主張しているのは、身体の病気(アレルギー)と精神の病気(強迫観念)を備えた本物のアルコホーリクについてなのですから。

アルコール依存症であるかどうかは、医者が診断すべきことです。しかし、本物のアルコホークであるかどうかは、自分で決めるしかありません。(だから、医者から与えられたアルコール依存症という病名を受け入れただけでは、ステップ1ができたとは言えないのです)。

認めることは容易くない

第三章はこう始まっています:

私たちのほとんどは、自分が本物のアルコホーリクだとは認めたがらなかった。自分の肉体や精神が、まわりにいる人たちとは違うなどということを、喜んで認める人間がいるわけはない。3)

ここで「本物のアルコホーリク(real alcoholics)」という言葉が使われていることに注意を向けましょう。アルコール依存症であることを認めるとは書いて。肉体や精神が他の人たちとは違うとは、身体のアレルギーと精神の強迫観念を持っているという意味です。すなわち、適正飲酒にも戻れないし、自力での断酒も続けられないということです。最初からそのことを認めたがる人はめったにいません。

あなたが、自分が適正な飲酒に戻れると信じているならば、あるいは自力で酒をやめ続けられると信じているならば、AAにも12ステップにも用はないでしょう。だから、AAから立ち去って、適正な飲酒を楽しまれるのも良いし、自力で断酒をするのも良いでしょう。AAのミーティングに出席したり、ステップワークに時間を費やす必要もありません。ただ、試してみても、適正飲酒ができなかったり、自力での断酒が続かないようであれば、AAに戻ってくることをお薦めします。その時には、本物のアルコホーリクであることを認める準備ができているかもしれません。

次回に続きます。

今回のまとめ
  • 第三章はステップ1を扱っている。
  • ステップ1は、自分が本物のアルコホーリクであることを認めること。
  • 本物のアルコホーリクであるとは、身体のアレルギーと精神の強迫観念を持っているということ。それを認めることは、認めた人に絶望をもたらす。
  • 本物のアルコホーリクであることを認めることは、容易たやすいことではない。

  1. BB, p.8 []
  2. BB, p.12 []
  3. BB, p.45 []