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ジェリネックによるアルコール症の諸型

—Jellinek's Species of Alcoholism. E.M.ジェリネックによるアルコール症(alcoholism)の諸型

1960年のジェリネックの『アルコール症の疾病概念(The disease concept of Alcoholism)』ではアルコール症の5つの主要な「型(species)」について記述し、ギリシャ文字に因んで名前を付けた。(訳注 邦訳は『アルコホリズム/アルコール中毒の疾病概念』、羽賀道信/加藤寛訳、岩崎学術出版社、1973) ホワイト (2007/1982)1), p.222

アルコホリズム――アルコール中毒の疾病概念』を入手できていないが、以下では、同書の引用先の情報およびジェリネックがコンサルタントを務めたWHOの専門委員会(Expert Committee on Alcohol and Alcoholism)の報告書の内容を元に彼の主張を再構成する。さらに近年の知見を加える。

ジェリネックによるアルコール症の諸型
身体依存精神依存
α型他の精神疾患などを原因とする症状としての過剰飲酒、症候性、二次的 -
β型身体的な合併症のみで、社会的な影響があっても深刻でないもの - -
γ型耐性、身体依存(離脱症状)、コントロール喪失によって特徴づけられるもの
δ型耐性、身体依存(離脱症状)、飲酒の中止不能によって特徴づけられるもの
ε型渇酒症 - -

ジェリネックによるアルコール症の諸型の概念図

ジェリネックによるアルコール症の諸型の概念図(筆者作成)

α型アルコール症

ALPHA ALCOHOLISM α型アルコール症
Jellinekの分類によると,飲酒の時間・場所・量・効果を支配している社会的習慣を度外視した飲酒で,身体的,感情的苦痛をやわらげるためのアルコールに対する純然たる心理的な持続性依存を含むのである.その結果として飲酒者の受ける損失は,対人関係や仕事の能率上のものに限定され,離脱症状はない.symptomatic alcoholismを参照. ケラー・マコーミック (1987/1982)2), p.40

α型アルコール症—精神的依存によって特徴づけられるが、生理学的依存に進行性は見られない。問題飲酒逃避型飲酒とも呼ばれる。 WHO (1994)3), p.43-44 →Lexicon of alcohol and drug terms (WHO)

α(アルファ)型は他の疾患・障害による身体的・感情的苦痛を和らげるために過剰飲酒が起こるもの。症候性、二次的と言える。→ 症候性アルコール症

統合失調症とアルコール乱用は併存しやすい。ECA studyによれば統合失調の診断を受けた者の33.7%にアルコール依存もしくは乱用が見られ、47%に何らかの薬物依存もしくは乱用が見られた(ニコチンを除く)[Drake and Mueser (2002)4) ]。 → Co-Occurring Alcohol Use Disorder and Schizophrenia (athealth.com)

発達障害者にアルコール・薬物乱用が多いことも知られている。星野仁彦は、成人ADHDの37.5%、成人アスペルガーの44%に何らかの衝動制御障害(アルコール・薬物以外に、摂食障害・浪費癖・ギャンブル・セックスを含む)が見られたと報告している [星野仁彦 (2012)5)]。 →「発達障害に気づかない大人たち」 [pdf] (大分県)

境界性パーソナリティ障害(BPD)においてアルコール・薬物乱用が多いことも知られている。Wave 2 Survey時の調査では、BPDの男女のうち50.7%に何らかの物質使用障害(依存または乱用)、24.2%にアルコール使用障害が見られた [Grant et. al (2008)6)]。 → Prevalence, Correlates, Disability, and Comorbidity of DSM-IV Borderline Personality Disorder: Results from the Wave 2 National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions (PubMed)

このように他の疾患・障害にアルコール・薬物の問題が併存することが多い。これは、他の疾患・障害によって引き起こされる身体的・情緒的苦痛をアルコールや薬物で解消しようとした結果、社会的な許容範囲を超えてしまったと考えられる。依存症の診断基準を満たしたとしても、それが一次的なアルコホリズム(つまり嗜癖)であるとは限らない。むしろ、ジェリネック他の主張するように、根本的な問題が解決されれば、アルコール・薬物の乱用も解消されることが多い。嗜癖として扱うよりも、根本にある疾患・障害への対処を行うべきだろう。

しかし、生来的な嗜癖的体質(素因)を持っていた場合には、アルコールの乱用が続けばやがて一次的なアルコホリズム(=嗜癖)に発展することもあり得る。

ジェリネックは「γ型に発展する可能性はあるが、一般的には進行は見られない」7)、また「コントロールは失われておらず、したがって(これ自体は)疾病ではない」8)とした。

身体依存 精神依存
α型 -

β型アルコール症

BETA ALCOHOLISM β型アルコール症
Jellinekの分類によると,多発性神経炎,胃炎,および肝硬変などの合併症を起こす恐れのある過度の飲酒のことであって,この場合アルコールに対する身体依存や精神依存はなく,飲酒を中止しても離脱症状は起こらない.この場合損失としては,収入の低下,生産性の低下,寿命の短縮などがある.gammna alcohlismdelta alcoholism(を参照)へ進行する恐れがある. ケラー・マコーミック (1987/1982)9), p.40

β型アルコホリズム—ひとつあるいは複数の臓器の身体的合併症、全般的な健康の衰えと寿命の短縮によって特徴づけられる。 WHO (1994)10), p.44 →Lexicon of alcohol and drug terms (WHO)

β(ベータ)型は、大量の飲酒が身体的疾患を引き起こしているもので、精神依存・身体依存を持たない(強迫的欲求や離脱症状がない)。ジェリネックは「このグループは疾病ではない」11)とした。現在では該当するカテゴリとして、生じている問題が心身のものであればICD-10有害な使用(F1x.1)、社会的なものであればDSM-IV物質乱用がある。

身体依存 精神依存
β型 - -

γ型アルコール症

GAMMA ALCOHOLISM γ型アルコール症
Jellinekの分類によると,「アルコールに対する組織の後天的耐性の増加」や,仮説のいわゆる順応的細胞代謝や離脱症状を含む過度の飲酒のことである.Jellinekは,酒への渇望(craving)はアルコールの身体依存のために生ずるとしており,一度始まったら途中で止めることのできない過度の飲酒のこと.心理的依存から身体依存への移行および著しい行動の変化が見られる.飲酒型(drinking pattern)はだんだんと増加して頻回となるもので,一時的な禁酒や節度のある飲酒をしている期間により中断されることもある.障害は全般的で,しかも重篤である.この種のアルコール症(alcoholism)が,英語圏の国々に最も多く見られるアルコール症(alcoholism)の型であるといわれ,A.A.はこのタイプを主なアルコール症(alcoholism)とみなしている.addictionの項のalcohol addictionを参照. ケラー・マコーミック (1987/1982)12), p.42

γ型アルコール症耐性の増大、コントロールの喪失、アルコール摂取を中断した際の離脱症状の出現によって特徴づけられる。アングロサクソン型アルコール症とも。 WHO (1994)13), p.44 →Lexicon of alcohol and drug terms (WHO)

γ(ガンマ)型。耐性、身体依存(離脱症状)があり、コントロール喪失(loss of control)の目立つアルコール症。ジェリネックはアルコール濃度の高い蒸留酒を飲む国で多く見られ、「合衆国におけるアルコール症の多数を占めるパターン」14)とした。

ジェリネクがコンサルタントとして加わっていたWHOの専門委員会では、コントロール喪失が目立つアルコール症についてこのように述べている:

4. “Inability to Stop Drinking” and “Loss of Control” (extracted)

A different course of the process of alcoholism may be seen in countries or social groups where the pattern of drinking involves predominantly the use of distilled spirits. Under such conditions the alcoholic, after an early phase of daily use, may change to drinking bouts separated by longer or shorter intervals. In these drinking bouts severe intoxication is the rule. After the ingestion of a small amount of alcohol, the drinker finds himself impelled to continue drinking on increasingly higher levels until he is stopped by external or internal factors. After that event, he is able to refrain from drinking for weeks or even months, i.e., he is “able to stop drinking”, but he evidently suffers from “loss of control” within a drinking bout once drinking has started. The “loss of control”, on account of its grave social and medical consequences, must also be regarded as a criterion of alcoholism.

4. 「飲酒中止の不能」と「コントロール喪失」(抜粋)

主に蒸留酒を用いた飲酒習慣がある国や社会集団においては、アルコール症の経過に別の経過が見られる。こうした条件下のアルコホーリクは、日常的飲酒の初期の段階で飲酒期間の間に長期あるいは短期の休止期間が挟まれるようになっていく。飲酒期間中には著しい酩酊が常である。少量のアルコールを摂取すると、飲酒者はさらなる飲酒に駆り立てられるように感じて量が増加し、それが外的あるいは内的要因によって止められるまで続く。そうした出来事が起きると、その人は数週間、時には数ヶ月飲酒から遠ざかることができる。言い換えれば、彼は「飲酒を中止することはできる」けれど、いったん飲酒を始めると飲酒期間中は「コントロール喪失」に悩んでいることは明白である。この「コントロール喪失」は、社会的にも医学的にも致命的な結果をもたらすので、アルコール症の診断基準の一つと見なされるべきである。 Expert Committee on Alcohol and Alcoholism (1955)15), p.8
Technical Report Series No.94 [pdf] (WHO)

このタイプは飲酒の中止は可能(able to stop drinking)だが、飲酒のコントロール喪失(loss of control)がある。酒を飲み出すと、コントロールができずに過剰に飲酒し、酷く酩酊する。このため何らかのトラブルが生じてしまい酒をやめる。飲酒の中止はそれほど困難ではない。再飲酒を防ぐことの必要性と困難はδ型と共通する。ジェリネックはγ型とδ型のみが疾患と呼ぶに相応しいと考えていた16)

身体依存 精神依存
γ型

AAのアルコホリズム概念との関係

AAのアルコホリズムの概念は、ビッグブックの「医師の意見」を書いたシルクワースの観察を基盤にしている。そこにはコントロール喪失・飲酒と断酒の繰り返し・再飲酒を防ぐことの困難が記述されているが、飲酒中止の困難については触れていない。これは、シルクワースが患者を診察したのがニューヨーク(つまりアメリカ国内)であったために、γ型のアルコール症を主に見ていたからだと考えられる。これにより、AAのアルコホリズムの概念もγ型アルコール症同様のものとなり、このタイプを「本物のアルコホーリク(real alcoholic)」としている [AA17), p.32]。

AAのヨーロッパへの定着は、イギリスとスカンジナビア諸国では早かったが、下記のδ型アルコール症が主流のフランスやドイツでは遅れた。これにはAAのアルコホリズム概念がγ型を想定していたことが影響したとも考えられる。

δ型アルコール症

DELTA ALCOHOLISM δ型アルコール症
Jellinekの分類によると,常習的に毎日過度に飲酒することで,アルコール耐性の増加,仮説的にいえば,いわゆる順応的組織細胞代謝や,離脱症状や,または飲酒が一時中断されると起こる酒の渇望を含む.これらは,Jellinekの考えでは,アルコールの身体依存のために生ずるものである.γ型アルコール症者にみられる飲酒の中止不能は,δ型アルコール症者の場合には禁酒不能という型で置き換えられているが,特別の場合,その人は社会的に是認されている量までで制限することは可能である.また「禁酒するとすぐに離脱症状が発呈する」.はっきりとした社会的,心理学的障害は少ないが,肝硬変症などの身体的障害が生ずる恐れがあり,寿命は短縮される.これはフランスをはじめとする主としてブドウ酒を飲む国々において支配的なアルコール症の型であると言われている. ケラー・マコーミック (1987/1982)18), p.42

δ型アルコホリズム耐性の増大、離脱症状、飲酒中止の不能によって特徴づけられるが、いかなる状況でもアルコールを摂取する量のコントロールの喪失はない。(alcoholizationを参照)。 WHO (1994)19), p.44 →Lexicon of alcohol and drug terms (WHO)

δ(デルタ)型。耐性、身体依存(離脱症状)があり、飲酒中止の不能(inability to stop drinking)の目立つアルコール症。ジェリネックはアルコール濃度の低い醸造酒を飲む国(「ワインを飲む国」)で多く見られる、とした。

WHOの専門委員会では、「飲酒中止の不能」が目立つアルコール症についてこのように述べている:

4. “Inability to Stop Drinking” and “Loss of Control” (extracted)

In “wine-drinking” countries, and some of the “beer-drinking” countries, a certain proportion of the drinkers reach a stage at which they cannot withstand any–even short–periods of abstinence, and drink day in, day out from rising till retiring for sleep, but do not lose the ability to regulate their alcoholic intake. They are able to adjust their degree of intoxication to the circumstances in which they find themselves. But they cannot be induced to abstain even when it has become evident to them that continuation of their drinking will lead to grave disease or other serious consequences.

This behaviour may be called “inability to stop drinking” and may be attributed to either physical or psychological dependence, or both. In wine-drinking countries this inability to stop has been regarded by some authors as the sole criterion of alcoholism.

4. 「飲酒中止の不能」と「コントロール喪失」(抜粋)

「ワインを飲む」国々や、「ビールを飲む」国々の一部では、一定の割合の飲酒者がまったく(短期間でも)断酒することができない段階に至る。来る日も来る日も、起きてから夜寝るまで飲むが、アルコールの摂取量を調整する能力は失っていない。その必要を感じたときには自ら酩酊の程度を調整できる。しかし、飲酒の継続が死の病やその他の深刻な結果に結びつくことを承知していても、彼らを断酒へと誘導することができない。

こうした行動は「飲酒中止の不能」と呼ばれるべきである、身体的依存、精神的依存、あるいはその両者によると考えられる。「ワインを飲む」国々では、この中止の不能がアルコール症の唯一の診断基準であると複数の研究者によって見なされている。 Expert Committee on Alcohol and Alcoholism (1955)20), p.8
Technical Report Series No.94 [pdf] (WHO)

このタイプは飲酒のコントロールをあまり喪失しておらず、状況に応じて酩酊の程度を調整することができる。しかし飲酒を中止することは困難で、飲酒が深刻な結果をもたらすことが明らかでも酒をやめることがなかなかできない。

身体依存 精神依存
δ型

γ型とδ型の比較

飲酒の
コントロール
飲酒の中止 アルコール性
ブラックアウト
主に見られる国
γ型 困難 可能 初期から見られる蒸留酒を飲む国
(アメリカ、イギリス、スカンジナビア諸国)
δ型 時に可能 困難 非常に進んだ段階で
見られる
ビール・ワイン(醸造酒)を飲む国
(フランス)

日本では日本酒やビールの醸造酒が主に飲まれているため(ジェリネックの分類が成り立つとすれば)δ型が主流をなすと考えられる。実際に、飲酒の中止が困難でだらだらと飲み続けるタイプのアルコール依存症者が多く見受けられる。(焼酎を多く飲む南九州地方や、泡盛を飲む沖縄ではγ型が主になる可能性があるが未確認)。

ε型アルコール症

EPSILON ALCOHOLISM ε型アルコール症
Jellinekの分類によると,周期性アルコール症(periodic alcoholism)のこと.dipsomaniaを参照. ケラー・マコーミック (1987/1982)21), p.42

epsilon alcoholism—paroxysmal or periodic drinking, binge drinking; sometimes referred to as dipsomaia. ε型アルコール症—一過性あるいは周期性の大量飲酒(binge drinking)。時に渇酒症(dipsomaia)と呼ばれる。 WHO (1994)22), p.44 →Lexicon of alcohol and drug terms (WHO)

 ε(エプシロン)型は、長期の断酒と大量飲酒が交互に繰り返されるもの。周期性アルコール症(periodic alcoholism)とも。詳しくは →渇酒症

身体依存 精神依存
ε型 - -

参考

症候性アルコール症

SYMPTOMATIC ALCOHOLIC 症候性アルコール症者
R.P.Knightの分類(1937)によると,「過剰飲酒が,重篤な精神病の一症状であるアルコール症者.アルコール症(alcoholism)それ自体は二次的なものであって,根本にある精神病的,器質的または神経症的問題が解決すれば解消する.KNIGHT(1937)によると,「第三のグループは,“症候性アルコール症者”(symptomatic alcoholics)と呼ぶことができる.この患者にとっては飲酒は単に付随的なものにすぎず,主要な症状ではない.別に重要な神経症的,精神病的な症状または器質的疾病がある」 ケラー・マコーミック (1987/1982)23), p.365

 →α型アルコール症

ジェリネックの功績の忘却

ジェリネックによるアルコール症の諸型
α型身体的な、かつ/あるいは、情緒的な苦痛を緩和するための、アルコールに対する精神的依存(psychological dependence)。γ型に発展する可能性はあるが、一般的には進行は見られない。身体的依存(physical addiction)はない。
β型身体的ないし精神的依存(physical or psychological addiction)のない、アルコール関連の医学的合併症。
γ型身体的依存(physical addiction)にまで進行しているアルコールに対する精神的依存(psychological dependence)。コントロールの喪失と、健康や職業上あるいは対人関係上の機能の崩壊によって特徴づけられる。合衆国におけるアルコール症の多数を占めるパターン。
δ型安定して、多量のアルコールを消費し、身体的依存(physical addiction)が生じている。断酒することは不可能であるが、コントロール喪失の証拠はない。
ε型断続的で爆発的な飲酒で、合間に断続的な禁酒期間がある。
(一部改変)

ジェリネックは、この5つのパターンのうち2つだけ、すなわちガンマ型とデルタ型だけが、疾患と呼ぶにふさわしいと信じていた。その2つはどちらも薬理学的意味においても、生理学的意味においても依存(addiction)を含んでいるからである。ジェリネックの歴史的著作であるこの本の出版以降、ジェリネックの研究の精密さは大部分忘れ去られた。特に彼の「アルコール症」についての考え方は切り縮められ、ただひとつの障害、すなわちジェリネックがガンマ型のアルコール症(gamma species alcoholism)と呼んだもとして、均質な姿で描かれるようになった。『アルコール症の疾病概念』はアルコール症の分野で最も頻繁に引用されるが、同時に最も読まれることのない本のひとつとなった。 ホワイト (2007/1982)24), p.223 第22章20世紀中葉に於けるアルコール症治療

批判など

Valverdeによると、ジェリネックの集大成とも言える1960年のアルコール症の疾病概念は、アルコール症(alcoholism)を拡大することでより多くの人を「疾病概念」の中に含めようとしたものではなく、むしろ(その名前とは裏腹に)その多くの型を疾病(disease)ではないとした。なぜなら「彼らはコントロールの喪失に苦しんでいないから」である。

同じく、ジェリネクの分類は、世にありふれたアルコール症者(garden-variety alcoholic)と真の疾病であるアルコール症者との間に明確な線引きをした。しかし、一般的なアルコホリズム(alcoholism in general=問題飲酒)と正常な飲酒の間には明確な線を引いていない。これはジェリネックのアキレス腱である。 [E._Morton_Jellinek

若干の考察

元来、alcoholismという言葉はアルコール嗜癖(alcohol addiction)のみではなく、嗜癖に含められない飲酒問題に対しても使われてきた。ジェリネックの分類は、この両者を区別することを狙っている。現在でもこうした区別は存在している。

ICD-10 DSM-IV
アルコール依存症候群 アルコール依存
アルコールの有害な使用 アルコール乱用

アルコール嗜癖(依存症)については、国による飲酒習慣の違いによりγ型・δ型という異なった性質を持つとした。その後、ジェリネックの功績は忘れ去られ、アルコール嗜癖(依存症)は単一のものとして扱われるようになった。

関連項目

外部リンク

1) , 24)
W・L・ホワイト (2007/1982), 『米国アディクション列伝: アメリカにおけるアディクション治療と回復の歴史』, 鈴木美保子他訳, 東京:ジャパンマック
2) , 9) , 12) , 18) , 21) , 23)
M.ケラー・M.マコーミック (1987/1982), 『アルコール辞典 改訂第2版』, 津久江一郎訳, 東京: 診断と治療社, amazon.jp
3) , 10) , 13) , 19) , 22)
WHO (1994), Lexicon of alcohol and drug terms. Geneva: World Health Organization →Lexicon of alcohol and drug terms (WHO)
4)
Drake, Robert E. and Kim T. Mueser (2002), Co-Occurring Alcohol Use Disorder and Schizophrenia (athealth.com)
5)
星野 仁彦 (2012), 講演「発達障害に気づかない大人たち」 [pdf] (大分県)
15) , 20)
Expert Committee on Alcohol and Alcoholism (1955), Report of an Expert Committee. Geneva: World Health Organization →Technical Report Series No.94 [pdf] (WHO)
17)
AA(2002), 『アルコホーリクス・アノニマス』 翻訳改訂版, AA日本出版局訳, 東京: AA日本ゼネラルサービスオフィス = AA(2001), Alcoholics Anonymous:The Story of How Many Thousands of Men and Women Have Recovered from Alcoholism, NY:Alcoholics Anonymous World Services
dependence/jellinek_s_species_of_alcoholism.txt · 最終更新: 2024/02/25 by ragi