(2010年2月23日朝日新聞 beワーク やさしい医学リポートより)
ダイエットは、いまや万人の関心事に近い。減量のために、様々な食事療法が提唱されている。カロリー源となる脂肪、たんぱく質、炭水化物の最適な比率についても議論がある。低脂肪食が一般的だが、たんぱく質を多くとり、炭水化物を少なくとるのを勧める食事療法などもある。論争に決善をつけることを目指した臨床試験の結果が、米国のニューイングランド医学誌に昨年2月掲載された。
肥満と肥満気味の米国人811人を、くじ引きで、摂取してもらう脂肪などの比率に応じて4群に分けた。
①低脂肪・通常たんばく・高炭水化物(それぞれ総カロリーの20%・15%・65%)
②低脂肪・高たんぱく・炭水化物(同20・25・55%)
③高脂肪・通常たんぱく・炭水化物(同40・15・45%)
④高脂肪・高たんぱく・低炭水化物(同40・25・35%)
これらの比率で1日の摂取量を750キ回カロリー減らすのを目標に、2年間でグループ指導を1~2週に1回、個別指導を8週に1回行った。
その結果、平均体重は高脂肪群(③④)でも低脂肪群(①②)でも、それぞれ3.3キロ減った。高たんぱく群(②④)で3.6キ回減、通常たんぱく群(①③)で3.Oキロ減と、これも誤差の範囲内の差。高炭水化物群(①、2.9キロ減)と低炭水化物群(④、3.4キロ減)も明確な差はない。
この研究は過去最大規模で、期間も最長の臨床試験の一つ。脂肪、たんぱく質、炭水化物の比率は重要でないことを明らかにした。そして、何であれ摂取カロリーを減らすことで、2年で約3キロという、大きくないが意味のある減量効果があった。指導の3分の2以上に出た人が9キロ減量を達成するなど、出席率や効果に個人差も大きかった。
規模や期間、研究者の熟練や具体的な指導法などの点で、今回の米ハーバード大グループなどによる研究をしのぐ報告は当分出ないだろう。
減量を望む肥満者は脂肪、たんぱく質、炭水化物の比率にあまりこだわるより、摂取カロリー自体を減らすのが重要。シンプルだが、それがこの研究の基本的メツセージだろう。(東北大教授 坪野吉孝)
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