世界に一つだけの花
~独身のAAメンバーのための恋愛のたとえ話~
荒野に種を蒔き、水をやり、世話をして花を育てている。
だが、花が育って咲くまでには時間がかかる。
遠くにチョウチョウが見えると、思わず嬉しくなって「わーいチョウチョだ、チョウチョだ」といって追い掛け回す。でも、チョウチョウは簡単にはつかまらない。
諦めて戻ってみると、放ったらかしだった花が枯れかけている。
「こりゃ大変だ」と慌てて水をやり世話をする。
またチョウチョウが見えて、追い掛け回してみるけれど、やっぱりつかまらない。
またも花はしなびてしまい、慌てて世話をする羽目になる。
今度は本腰を入れて花の世話をしてみることにする。その甲斐があって、やっと花が咲く。
その咲いた花にチョウチョウがやってきて止まる。
チョウチョウは捕まえようと思っても捕まらない。
花を育てれば、自然にチョウチョウのほうからやってきてくれる。
作者不明
付記
知り合いのAAメンバーから聞いた内容を、私が膨らませて書いた話。
後日、ハビエル・ガラルダ神父(Fr. Javier Garralda, 1931-)の書かれた本に、「幸せは蝶のようなものである。蝶を掴もうと思えば逃げられるけれども、他のものをじっと見つめていれば、いつの間にか蝶が静かに肩の上に止まっていたことに気づくものである」 とあるのを見つけました。なんだ、僕が知らなかっただけの話か・・・。
最近になってもう少し調べてみたところ、アメリカの作家ヘンリー・デイヴィッド・ソロー (1817-1862)の言葉で、有名な『ウォールデン 森の生活 』の一節だという情報が見つかりました。
幸福というのは蝶に似ている。追いかければ追いかけるほど遠くに去る。だけど、あなたが気持を変えて、ほかの事に興味を向けると、それは こちらにやってきて、そっとあなたの肩に止まるのだ。
Happiness is like a butterfly, the more you chase it, the more it will evade you, but if you notice the other things around you, it will gently come and sit on your shoulder.
ソローの言葉というのが定説のようで、この名句を印刷したポストカードやポスターなどが売られています。『森の言葉』の原文を見つけたので中を検索してみたのですが、この文章は見当たりませんでした。
そこでもうちょっとだけ調べてみたところ、Quote Investigatorというサイトに情報がありました。
これは、様々な名句のオリジナルの出典を探した結果を示しているサイトで、作者は Hemingway Didn’t Say That (ヘミングウェイはそんなこと言ってない)という本を出しています。
Quote Investigatorのこちらのページによれば、この一節はソローのものではなく(また異説にあるようにホーソーンの言葉でもなく)、1848年にルイジアナ州ニューオリンズの新聞に載った記事が始まりなのだそうです。1)
200年近く前のアメリカの新聞記事が、巡り巡ってAAメンバーの口を経て僕に伝わったというのも不思議な話です。僕はソローもエマーソン2)も読んだことがない無学な男なのに蝶の話だけは知っているのですから。
(初掲載:2004-1-30)
- Garson O’Toole, Happiness Is A Butterfly, Which When Pursued, Seems Always Just Beyond Your Grasp – Quote Investigator (quoteinvestigator.com), 2014-4-17[↩]
- ラルフ・ワルド・エマーソン (1803-1882)。[↩]
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