それでもなお

Mother Teresa

人は不合理、非論理、利己的です
それでもなお、人を愛しなさい

あなたが善を行うと、
利己的な目的でそれをしたと言われるでしょう
それでもなお、善を行いなさい

目的を達しようとするとき、
不実な友だちと本物の敵に出会うでしょう
それでもなお、やり遂げなさい

善い行いをしても、
おそらく次の日には忘れられるでしょう
それでもなお、し続けなさい

あなたの正直さと誠実さとが、あなたへの攻撃を招くでしょう
それでもなお、正直で誠実であり続けなさい

何年もかけて作り上げたものが、一晩で壊されるでしょう
それでもなお、作り続けなさい

本当に助けを必要とする人たちも、
助けたあなたに恩知らずの仕打ちをするでしょう
それでもなお、助け続けなさい

あなたの中の最良のものを、この世界に与えなさい
たとえそれが十分でなくても
それでもなお、最良のものをこの世界に与え続けなさい

最後に振り返ると、あなたにもわかるはず
結局は、全てあなたと内なる神との間のことなのです
あなたと他の人の間のことであったことは一度もなかったのです


ANYWAY

People are unreasonable, illogical, and self-centered,
LOVE THEM ANYWAY

If you do good, people will accuse you of
selfish, ulterior motives,
DO GOOD ANYWAY

If you are successful,
you win false friends and true enemies,
SUCCEED ANYWAY

The good you do will be forgotten tomorrow,
DO GOOD ANYWAY

Honesty and frankness make you vulnerable,
BE HONEST AND FRANK ANYWAY

What you spent years building may be destroyed overnight,
BUILD ANYWAY

People really need help
but may attack you if you help them,
HELP PEOPLE ANYWAY

Give the world the best you have
And you’ll get kicked in the teeth,
GIVE THE WORLD THE BEST YOU’VE GOT ANYWAY.

You see, in the final analysis, it is between you and God;
IT WAS NEVER BETWEEN YOU AND THEM ANYWAY.


マザー・テレサ (Mother Teresa, 1910-1997)によるとされる詩ですが、調べてみたところアメリカの元官僚ケント・M・キース (Kent M.Keith, 1949-)による「逆説の10ヵ条」が元になっていることが分りました。

逆説の10ヵ条

人は不合理で、わからず屋で、わがままな存在だ。
それでもなお、人を愛しなさい。

何か良いことをすれば、隠された利己的な動機があるはずだと人に責められるだろう。
それでもなお、良いことをしなさい。

成功すれば、うその友だちと本物の敵を得ることになる。
それでもなお、成功しなさい。

今日の善行は明日になれば忘れられてしまうだろう。それでもなお、良いことをしなさい。

正直で率直なあり方はあなたを無防備にするだろう。それでもなお、正直で率直なあなたでいなさい。

最大の考えをもった最も大きな男女は、最小の心をもった最も小さな男女によって撃ち落されるかもしれない。それでもなお、大きな考えをもちなさい。

人は弱者をひいきにはするが、勝者の後にしかついていない。それでもなお、弱者のために戦いなさい。

何年もかけて築いたものが一夜にして崩れ去るかもしれない。それでもなお、築きあげなさい。

人が本当に助けを必要としていても、実際に助けの手を差し伸べると攻撃されるかもしれない。それでもなお、人を助けなさい。

世界のために最善を尽くしても、その見返りにひどい仕打ちを受けるかもしれない。それでもなお、世界のために最善を尽くしなさい。

ケント・M・キース1)


The Paradoxical Commandments

People are illogical, unreasonable, and self-centered.
Love them anyway.

If you do good, people will accuse you of selfish ulterior motives.
Do good anyway.

If you are successful, you will win false friends and true enemies.
Succeed anyway.

The good you do today will be forgotten tomorrow.
Do good anyway.

Honesty and frankness make you vulnerable.
Be honest and frank anyway.

The biggest men and women with the biggest ideas can be shot down by the smallest men and women with the smallest minds.
Think big anyway.

People favor underdogs but follow only top dogs.
Fight for a few underdogs anyway.

What you spend years building may be destroyed overnight.
Build anyway.

People really need help but may attack you if you do help them.
Help people anyway.

Give the world the best you have and you’ll get kicked in the teeth.
Give the world the best you have anyway.

— Kent M. Keith 2)


ケント・M・キースが書いたものが、なぜマザー・テレサ作とされているのか、そして違いについてのキースによる解説がこちら (The Mother Teresa Connection — Kent M. Keith) 3)にあったので、訳してみました。

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マザー・テレサとの関係

「逆説の10ヵ条」はケント・M・キースが、ハーバード大学 の2年生のときに書いたものである。彼が学生リーダーたちのために書いた本 The Silent Revolution: Dynamic Leadership (静かなる革命:学生自治におけるダイナミックなリーダーシップ) に収録されており、1968年に Harvard Student Agencies から出版された。その後「逆説の10ヵ条」は世界中に広く伝わり、多くの人々に使われた。

発見

マザー・テレサはこの「逆説の10ヵ条」をカルカッタ にあった彼女の孤児院の壁に掲げた。この事実は、1995年に出版されたルシンダ・ヴァーディの『マザー・テレサ語る』(Lucinda Vardey, Mother Teresa: A Simple Pathで報告されている。出版の結果、「逆説の10ヵ条」をマザー・テレサの手になるものと考える人たちもいる。

彼は著書『それでもなお、人を愛しなさい―人生の意味を見つけるための逆説の10カ条』Do It Anyway: The Handbook for Finding Personal Meaning and Deep Happiness in a Crazy Worldのなかでこう述べている。

「私はそれを1997年の9月に、ロータリークラブの会合で見つけました。私たちは会合を毎回その日の祈りや黙想で始めることにしているのですが、あるメンバーが立ち上がってマザー・テレサが亡くなったことを伝え、彼女を偲んで、彼女が書いた『Anyway』という詩を朗読したいと言ったのです。私は頭を下げてそれを聞いていたのですが、それが「逆説の10ヵ条」のうちの8つであることがわかり、とても驚きました」

「私は会合の後で彼に声をかけ、どこでその詩を手に入れたのか尋ねました。彼はそれをマザー・テレサについての本で知ったそうなのですが、題名を憶えていませんでした。それで私は次の晩に書店に行き、マザー・テレサの人生と業績を紹介した本を探しました。それは『マザー・テレサ語る』という本の最後のページで見つかりました。「逆説の10ヵ条」は詩のようにかたちを整えられ、「それでもなお(Anyway)」という題が付けられていました。著者が誰かは書かれていませんでしたが、ページの一番下には「カルカッタの孤児院、シシュババン(Shishu Bhavan=子供の家)の壁に掲げられていたもの」と書かれていました。」

「マザー・テレサは「逆説の10ヵ条」を孤児院の壁に掲げる価値があると考えたのでしょう。そのことは私の心を揺さぶりました。笑いたい、泣きたい、叫びたい気持ちが押し寄せ、私の首筋がざわめきました。おそらく、私がそれほどまでに心を揺さぶられたのは、私がマザー・テレサをたいへん尊敬していたのと、さらにおそらくは、その孤児院についていくらかのことを知っていたからでしょう。理由はともあれ、そのことは私にたいへんな衝撃を与えました。それが、私が最初に「逆説の10ヵ条」を書いてから30年経って、もう一度それについて話をしたり、書いたりしようと決心した理由です」

マザー・テレサの壁の言葉

マザー・テレサの孤児院の壁には何と書かれていたのでしょう? ルシンダ・ヴァーディの『マザー・テレサ語る』によると、カルカッタの孤児院シシュババンの壁」にはこう書かれていた。

ANYWAY

People are unreasonable, illogical, and self-centered,
LOVE THEM ANYWAY
人は不合理、非論理、利己的です
それでもなお、人を愛しなさい

If you do good, people will accuse you of
selfish, ulterior motives,
DO GOOD ANYWAY
あなたが善を行うと、
利己的な目的でそれをしたと言われるでしょう
それでもなお、善を行いなさい

If you are successful,
you win false friends and true enemies,
SUCCEED ANYWAY
目的を達しようとするとき、
うその友だちと本物の敵に出会うでしょう
それでもなお、やり遂げなさい

The good you do will be forgotten tomorrow,
DO GOOD ANYWAY
善い行いをしても、
おそらく次の日には忘れられるでしょう
それでもなお、し続けなさい

Honesty and frankness make you vulnerable,
BE HONEST AND FRANK ANYWAY
あなたの正直さと誠実さとが、あなたへの攻撃を招くでしょう
それでもなお、正直で誠実であり続けなさい

What you spent years building may be
destroyed overnight,
BUILD ANYWAY
何年もかけて作り上げたものが、一晩で壊されるでしょう
それでもなお、作り続けなさい

People really need help
but may attack you if you help them,
HELP PEOPLE ANYWAY
本当に助けを必要とする人たちも、
助けたあなたに恩知らずの仕打ちをするでしょう
それでもなお、助け続けなさい

Give the world the best you have
And you’ll get kicked in the teeth,
GIVE THE WORLD THE BEST YOU’VE GOT ANYWAY.
あなたの中の最良のものを、この世界に与えなさい
たとえそれが十分でなくても
それでもなお、最良のものをこの世界に与え続けなさい

この版は、オリジナルの「逆説の10ヵ条」のうち八つを含んでいる。除かれたのは、6番目(大きな考えをもちなさい)と7番目(弱者のために戦いなさい)の二つ。他の八つの言葉遣いはケント・キースが1968年に書いたオリジナル版にとても近い。

1999年、ロバート・シュラー牧師(Rev. Robert Schuller)が、彼の本 Turning Hurts into Halos の中に「それでもなお(Anyway)」を収めている。彼はマザー・テレサの葬儀にアメリカ合衆国を代表して大統領が送った15人の派遣団の一人である。彼らがマザー・テレサの児童養護施設を訪れたとき、シスターの一人がこう言った。「シュラー博士、見て下さい。マザー・テレサはこれを、こんなにも大きな字で、額に入れて、正面ロビーの壁に掲げたのです」。シュラー博士が見たのは・・

ANYWAY

People are unreasonable, illogical, self-centered
…love them anyway.

If you do good, people will accuse you of selfish, ulterior motives
…do good anyway.

If you are successful, you win false friends and true enemies
…be successful anyway.

The good you do today may be forgotten tomorrow
…do good anyway.

Honesty and frankness will make you vulnerable
…be honest and frank anyway.

People love underdogs but follow only top dogs
…follow some underdog anyway.

What you spend years building may be destroyed overnight
…build anyway.

People really need help but may attack you if you try to help
…help people anyway.

If you give the world the best you have, you may get kicked in the teeth
…but give the world the best you have
…ANYWAY.

この版には、オリジナル版の「逆説の10ヵ条」のうち九つが含まれている。6番目の戒律(大きな考えをもちなさい)だけが除かれている。また、ここでも言葉遣いはケント・キースが1968年に書いたオリジナル版に近い。

マザー・テレサの名でウェブ上に広がっているものは、最後の2行から『最後に振り返ると』と呼ばれている。その2行とは

You see, in the final analysis, it is between you and God;
It was never between you and them anyway.
最後に振り返ると、あなたにもわかるはず
結局は、全てあなたと内なる神との間のことなのです
あなたと他の人の間のことであったことは一度もなかったのです

ケント・キースはこの版に対してこうコメントしている。

もちろん、これは私のオリジナル版にもなかったし、マザー・テレサが壁に掲げた版にもありませんでしたが、彼女のものとされることもしばしばです。

この「最後に振り返ると」版の最後の2行に私は悩まされます。なぜならそれが、イエスの教えにも、マザー・テレサの人生とも、また「逆説の10ヵ条」のメッセージとも矛盾しているように読めるからです。「あなたと他の人の間のことであったことは一度もない」という言葉は、他の人たちを見捨てること、無視すること、軽んじることのように思えます。

イエスは、そういうことをしないようにと、私たちに語りました。イエスは、二つの大切な戒律があると教えました。神を愛し、そして私たちの隣人を愛しなさいと。ですから、振り返って考えれば、それはあなたがたと神との間のこと、またあなたがたと「他の人」との間のことであるはずです。イエスは、私たちは他の人を愛し、他の人を助けなければならない、とはっきり言っています。私たちは他の人々を見捨てたり、無視したり、見限ることはできません。それが「逆説の10ヵ条」の主張ではなかったでしょうか? 私たちは人を愛し、助けることの意味を見つけ出さねばなりません。相手が誰であったとしても、また、どんなに難しい相手だったとしても、ともあれ、私たちは他の人たちを愛し、助けることの意味を見つけなければなりません。


オリジナルを書いたキースはネットで広がっている「マザー・テレサ作とされたもの」について、あまりお気に召してはいないのかもしれません。ですが、僕としては最後に付け加えられた部分に矛盾は感じないので、ネットでポピュラーな版を採用することにしました。


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(初掲載:2014-12-31)


  1. 訳はja.wikipedia.orgから[]
  2. Kent M. Keith, The Paradoxical CommandmentsKent M. Keith – Finding Personal Meaning in a Crazy World (kentmkeith.com),  2012/3/15[]
  3. ibid., The Mother Teresa Connection,  2012/3/15[]

2021-08-07

Posted by ragi