機能の全体的評定(GAF)尺度
The Global Assessment of Functioning – GAF Scale
精神的健康と病気という1つの仮想的な連続体に沿って、心理的、社会的、職業的機能を考慮せよ。身体的(または環境的)制約による機能の障害を含めないこと。
(注:例えば、45、68、72のように、それが適切ならば、中間の値のコードを用いること)
コード | 重症度 | 機能のレベル |
100-91 | 症状は何もない。 | 広範囲の行動にわたって最高に機能しており、生活上の問題で手に負えないものは何もなく、その人の多数の長所があるために他の人々から求められている。 |
90-81 | 症状がまったくないか、ほんの少しだけ(例:試験前の軽い不安)。 生活に大体満足し、日々のありふれた問題や心配以上のものはない(例:たまに、家族と口論する)。 |
すべての面でよい機能で、広範囲の活動に興味をもち参加し、社交的にはそつがない。 |
80-71 | 症状があったとしても、心理的社会的ストレスに対する一過性で予期される反応である(例:家族と口論した後の集中困難)。 | 社会的、職業的または学校の機能にごくわずかな障害以上のものはない(例:学業で一時遅れをとる)。 |
70-61 | いくつかの軽い症状がある(例:抑うつ気分と軽い不眠)。 | 社会的、職業的、または学校の機能に、いくらかの困難はある(例:時にずる休みをしたり、家の金を盗んだりする)が、全般的には、機能はかなり良好であって、有意義な対人関係もかなりある。 |
60-51 | 中等度の症状(例:感情が平板的で、会話がまわりくどい、時に、パニック発作がある)。 | 社会的、職業的、または学校の機能における中等度の障害(例:友達が少しかいない、仲間や仕事の同僚との葛藤)。 |
50-41 | 重大な症状(例:自殺念慮、強迫的儀式が重症、しょっちゅう万引する)。 | 社会的、職業的、または学校の機能において何か重大な障害(友達がいない、仕事が続かない)。 |
40-31 | 現実検討かコミュニケーションにいくらかの欠陥(例:会話は時々非論理的、あいまい、または関係性がなくなる)。 | 仕事や学校、家族関係、判断、思考または気分など多くの面での重大な欠陥(例:抑うつ的な男が友人を避け家族を無視し、仕事ができない。子どもが年下の子どもを殴り、家庭では反抗的であり、学校では勉強ができない)。 |
30-21 | 行動は妄想や幻覚に相当影響されている。または、意思伝達か判断に粗大な欠陥がある(例:時々、滅裂、ひどく不適切にふるまう、自殺の考えにとらわれている)、 | ほとんどすべての面で機能することができない(例:一日中床についている、仕事も家庭も友達もない)。 |
20-11 | 自己または他者を傷つける危険がかなりあるか(例:死をはっきり予期することなしに自殺企画、しばしば暴力的になる、躁病性興奮)。 または、コミュニケーションに重大な欠陥(例:ひどい滅裂か無言症) |
時には最低限の身辺の清潔維持ができない(例:大便を塗りたくる)。 |
10-1 | 自己または他者をひどく傷つける危険が続いている(例:暴力の繰り返し)、または、死をはっきりと予測した重大な自殺行為。 | 最低限の身辺の清潔維持が持続的に不可能。 |
0 | 情報不十分。 |
— APA (2000) 1)
以下は僕です。
精神の「健康」と「病気」の間に境界はなく、連続体であると考えられます。
1962年にLuborskyらによって、健康と病気の間を0~100の数字で評価する方法が開発されました。改定を経て、1987年APA(アメリカ精神医学会 )のDSM(精神障害の診断と統計マニュアル )に取り入れられ広まりました。
重症度(病気の症状)と機能レベル(社会や職業上で果たす役割)のふたつを評価し、どちらかの低い方のコードを使うことになっています。18歳未満にはC-GAS尺度を用います。
DSM-5では、GAFに代わってWHODAS(WHO Disability Assessment Schedule, WHO 障害評価面接基準)が採用されました。
付記
掲示板に「精神の健康とは何か」という質問があったことがきっかけで掲載した記事です。精神の健康と不健康の間に線を引けるのか、という問いに対しては、明確な境界線は引きようがない、というのが答えになりましょう。
(初掲載:2006-5-20)
- APA 『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引』, 医学書院, 2003, pp.43-44[↩]
最近のコメント