ABOUT AA 1 専門家がAAグループを始めるには

1990年頃に翻訳出版されていた『About AA 専門家向けニューズレター』の第1号です。


ABOUT AA No.1 専門家向けニューズレター 1982年冬季号

専門家がAAグループを始めるには

AAグループを始めたいという問い合わせが、専門家、更生施設、ハーフウェイハウス、宗教団体等から数多く寄せられているが、それに対しGSO*は通例、最寄りのAAオフィス、またはその地域にあるAA委員会等に連絡し、グループを始めた経験のあるAAメンバーか、少なくともAAで数年間はソブラエティ(飲まずに生きること)を続けているメンバーに協力を要請していただくようお願いしている。
* GSO: A.A. General Service Office.

だがAAメンバーがどれほどお力になりたいと思っても、例えば地理的等、諸般の事情により、AAメンバー以外の方がミーティングを開く必要に迫られる場合も応々にしてあることと思う。そのような場合、それに関係する方々に、専門的治療とAAによる非専門的な自助活動1)との相違点をはっきり知って頂くことが重要なポイントと思われる。

バーモンド州ホワイトリバージャンクション、V.A.病院のアルコールリハビリテーションプログラム、メディカルディレクターである John M. Serveringhaus 博士の言葉によれば「AAと病院は明らかに全く異質なものだ」。1980年、ニューオルリンズで開かれたAA国際会議2)での演説の中で、彼はこう主張している。更に続けて、「アルコール中毒の患者の為に専門家ができる最善の方法は、患者自身が有効にAAを活用できるよう援助することである。しかしながらAAと病院、それぞれがうまくいく為には、はっきりと区別されなければならない境界線がある」。

「双方とも、それぞれにとっては正しい基本的な原理を持っているが、この二つの原理が混同されてしまうとひどいことになってしまう。混同しない為には、それぞれが相手方の役割を明確に認識することである」。

「AAの回復のプログラムは、仲間やグループの影響に大きくかかっているが、回復する為の最終的な責任は、まさしくあたりまえのことだが、本人にかかっている。どこにも主治医はいないのである。一方治療費を受けているところでは、専門家であることが職務である。病院では組織的でなければならないし、患者に対し責任をもつ人がいなければならないのである」。

「AAも専門家も一緒になって突進していく前に、お互いを注意深く知ろうとしなければならない。さもないと、必ず問題が起こるだろう。どんな共同事業でも、契約前にお互いを良く知る為に時間をかけるから、仕事もうまくいくというものだ」。

AAグループを始める必要に迫られている専門家の方々のため、下記のような提案をしたい。

  • できるだけ沢山AAのオープンミーティングに出席し、更にさまざまな地域やさまざまな社会的経済的諸階層のグループに行き、AAがそれらのあらゆるレベルでどんな活動をしているか知ることが役立つのではないか。
  • AAの出版物の中でも特に「AAグループ」が役立つと思う。そこには、AAグループをつくる上で、またAAグループを運営する上で必要なこと全てが書かれている。その他のパンフレットとしては、「これがAAだ」3)「44のQ&A」4)「絵で見る12の伝統」等がある。
  • 経験によれば、患者のグループワークは専門施設のスタッフによって運営されているものより、誰か他の人によって運営されている方がうまくいっているようである。こうすれば専門家は自分の能力を発揮することに専念でき、また、AAと施設は全く別なもので、AAは非専門的なものであり、ボランティアだということを患者に強調できるだろう。
  • AAが施設と従属関係にはないことを明らかにするためにも、ミーティングには病院、リハビリセンター、教会等の名称はつけず、全く別の名前をつけた方がうまくいくようである。

詳細についてはいつでもAA GSOへお問い合わせ頂きたい。
(国内ではAA日本サービスオフィスヘ)

アルコール中毒の従業員を援助している企業のために

新しい小冊「AA and Occupational Alcoholism Program」(AAと職場のアルコール中毒者に対するプログラム)5)では、アルコール中毒の従業員のためにプログラムを組もうとしている企業、組合、政府機関等とAAがどう関わっていけるかを示している。

この小冊では、AAがそれらの組織と協力していきたい意向を示すとともに、AAはあくまで非専門的であり、助けを求めてきたアルコール中毒者が個人として回復し、ソブラエティ(飲まずに生きること)を続けていくことだけに係っていくことを特に強調している。AA自体、アルコール中毒に対するプログラムを組み立てることはないが、そのような組織と共にAAメンバーは、アルコール中毒からの回復の経験を分かち会えるチャンスを歓迎している。具体的には、一般向けの会合で従業員に対しAAのプログラムについて述べる、非公式に取締役、人事担当者、組合幹部等と会い、AAが協カできる方法について話し合う、助けを求めてきた従業員と一緒に地域のAAミーティングに出席する、等の方法がある。

なぜAAは無名なのか?

新しく来た人たちが尋ねる最も一般的なこの質問に答えて、パンフレット“アノニミティをご存知ですか? (アンダースタンディングアノニミティ)”がこの程改訂された。すでにAAの中の“アノニマス”とはプライバシーの保証でもあることが大部認識されてきてはいるが、それ以外にもアノニミティについてはさまざまな概念があり、それはAAのメンバーにも、そうでない人にも非常に混乱して受け取られている。特にマスコミのレベルでは。

何年にもわたったアノニミティに関するフェローシップの経験をかえりみて、AAが引き続き存在し、成長していくためにはアノニミティを守ることが唯一最善の道であるという結論にいかに達したかを、このパンフレットは紹介している。

Q&Aの項では、新しく来た人がAAのメンバーシップについて友達や会社の同僚に知らせるべきか、何故、印刷物やマスコミ等で紹介される有名人やその他のメンバーも無名の伝統を守り続けているのか、新聞やテレビのショー番組で、名前は出さなくてもメンバーの写真を出したら無名性を破ったことになるのは何故か、等々についてお答えしている。

聴覚障害者の方がAAの情報を得るには

全国聴覚障害者協会(National Ass. For Deaf) の専門家により、このほど“A Brief Guide to AA”6)が読解力に制約がある聴覚障害者にとってもわかりやすいように書き換えられた。

聴覚に障害をもつ読者の一部の方々にとって、テキストがそのままでは理解するのに困難な点もあることがわかり、そこで上記の小冊が特にAAを紹介する上で適切と思われまず第ーに書きかえられた。

特別に大きな活字で簡単に書かれているため、小さい文字では見えにくい高齢のアルコール中毒者や、読解力に制約のある人にとっても非常に役に立つのではないかと思う。数に限りはあるが、御希望があればGSOより無料で送付される。この小冊については版権がないので無許可でコピーをとっても差しつかえない。


About A.A. a newsletter for professional men and women
Winter 1982 “When Non-A.A.’s Want to Start an A.A. Group” (aa.org)


  1. AAの出版物のなかに self-help という言葉が登場する珍しい例である。 []
  2. AAインターナショナル・コンベンション []
  3. 『AAとは』。 []
  4. 『よくある質問』へと改題された。 []
  5. 未訳。 []
  6. 『AA早分かり』。 []

Posted by ragi