受け入れることが答えだった
つまり、受け入れることが、私のあらゆる問題に対する答えだったのだ。私の気持ちが不安定になるのは、ある人物、どこかの場所、ものごとや状況といった、自分の生活の中の何かが、私には受け入れがたいからなのであり、その人や場所やものごとや状況を、あるがままに受け入れてこそ、落ち着きが得られるのである。神が作った世界では、たまたま何かが間違って起こるというようなことはありえない。自分のアルコホリズムを受け入れて初めて、私は酒をやめることができた。同様に、人生をあるがままに受け入れなければ、幸せになれるはずがないと思っている。私が全力を注ぐべきことは、自分のまわりを変えることよりも、自分自身を変えること、自分の態度を変えることなのだ。
「この世界はすべてこれ一つの舞台、人間は男女を問わずすべてこれ役者にすぎぬ」とはシェークスピアの言葉だが、シェークスピアは、私のような鋭い批評家がいることを忘れていたようだ。私は、どんな人物であれ、どんな状況であれ、必ずそこに欠点を見つけ出した。人は誰しも、私と同じように完ぺきを求めていると思っていたから、その人の欠点を指摘することに喜びを感じた。しかし、AAによって、そして受け入れることによって私が学んだことは、最悪の人の中にも良いものが必ずあり、最高の人の中にもいやな面があるという事実だった。また、私たち全員が神の子であり、すべての人にそれぞれの居場所と自由があるということを学んだ。私が、自分自身のことや人のことに文句をつけるなら、それは神の行いに対して文句を言うのと同じことである。そしてそのことは、神よりも私のほうがものごとがよくわかっていると言っていることになる。
長いあいだ私は、自分のような善人がアルコホ-リクになるなんて、最悪の出来事だと思ってきた。でも、いまは違う。アルコホ-リクになったことは最高の出来事だと思っている。そうしてみると、自分にとって何がいいことなのかどうかは、自分では推し量れないということになる。自分でさえ、自分にとって何がいいことかどうかわからないのだから、他の人に何がよくて何が悪いかということなど、私にわかるわけがない。従って,他の人にアドバイスができなくても、あるいは自分にとって何が一番いいのか予測できなくても、今日という日を、特に自分自身の人生をあるがままに受け入れるなら、幸せに生きていくことができる。AAと出会う以前は、私は自分の考えだけが正しいと思って取り仕切ってきた。一方、世間のほうは、私の行動だけで私を評価してきた。
AAワールド・サービス社の許可のもと収録 1)
ACCEPTANCE WAS THE ANSWER
And acceptance is the answer to all my problems today. When I am disturbed, it is because I find some person, place, thing, or situation—some fact of my life—unacceptable to me, and I can find no serenity until I accept that person, place, thing, or situation as being exactly the way it is supposed to be at this moment. Nothing, absolutely nothing, happens in God’s world by mistake. Until I could accept my alcoholism, I could not stay sober; unless I accept life completely on life’s terms, I cannot be happy. I need to concentrate not so much on what needs to be changed in the world as on what needs to be changed in me and in my attitudes.
Shakespeare said, “All the world’s a stage, and all the men and women merely players.” He forgot to mention that I was the chief critic. I was always able to see the flaw in every person, every situation. And I was always glad to point it out, because I knew you wanted perfection, just as I did. A.A. and acceptance have taught me that there is a bit of good in the worst of us and a bit of bad in the best of us; that we are all children of God and we each have a right to be here. When I complain about me or about you, I am complaining about God’s handiwork. I am saying that I know better than God.
For years I was sure the worst thing that could happen to a nice guy like me would be that I would turn out to be an alcoholic. Today I find it’s the best thing that has ever happened to me. This proves I don’t know what’s good for me. And if I don’t know what’s good for me, then I don’t know what’s good or bad for you or for anyone. So I’m better off if I don’t give advice, don’t figure I know what’s best, and just accept life on life’s terms, as it is today–especially my own life, as it actually is. Before A.A. I judged myself by my intentions, while the world was judging me by my actions.
Reprinted with permission of A.A. World Services, Inc. 2)
付記
ビッグブックの後半には個人の体験記が載っていますが、これは英語版ビッグブックの第3版に “DOCTOR, ALCOHOLIC, ADDICT”(医者、アルコホーリク、アディクト)というタイトルで掲載されたドクター・ポール・O(Dr. Paul O.)の体験記からの抜粋です。この一節は449ページに掲載されていたため、「受け入れること」を説明するのにこのページ番号だけ言えば足りる、というほどAAメンバーに親しまれました。
第4版では “ACCEPTANCE WAS THE ANSWER” というタイトルになり、417ページに移りました。日本語訳は『アルコホーリクス・アノニマス 回復の物語Vol.3』に、「受け入れることが答えだった」というタイトルで収録されました。
語り手のドクター・ポール・Oは、There’s More Quitting Drinking than Quitting Drinking、You Can’t Make Me Angry という本も出しています。2000年没。
書籍
音声
(初掲載:2007-4-10)
- AA『アルコホーリクス・アノニマス 回復の物語Vol.3』, AA日本ゼネラルサービス, 2011, pp.70-72[↩]
- AA, Alcoholics Anonymous: fourth edition, AAWS, 2001, pp.417-418[↩]
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