ビッグブック日本語版初版に掲載されていた訳注
訳者註 AAプログラムは宗教活動ではない。アルコール中毒者の場合、宗教的なものから始める試みはほとんどうまくいっていない。理由は二つあると思われる。
一つは、ほとんどのアルコール中毒者が、「聞く能力」を失っているので、無駄な「説教」をすることになる。それでは、アルコール中毒者が酒から解放されるのに足るだけの「考え方の変化」をもたらすことができない。その上に「自分で理解しない神」を与えられるために、人間を内面から変えさせるような霊的体験を、本人がする機会を失くさせる恐れがある。
第二に、信心に熱中することで一時酒をやめても長続きしない。アルコール中毒は精神だけでなく肉体の病気である。信心は酔うほどに熱中してはじめて効果があると恩われるが、いつか醒める。醒めた時、アルコール中毒者は飲みたくなっている。アルコール中毒者は、何ものにも酔わない(ソーバーである)のがよいのである。
われわれの経験では、宗教について深く考えたり、教えを受けたりするのは、AAプログラムを一年以上仲間と一緒にやってからの方がよいと恩われる。
付記
ビッグブックの日本語版初版には、付録の「霊的体験について」の後に、訳者ピーター神父(田中道雄, 1929-1984)による注が加えられていた。後の増刷時にこの注は削除された。
(初掲載:2010-3-9)
- AA 『Alcoholics Anonymous アルコール中毒からの回復』, AA J.S.O., 1979[↩]
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