日々の棚卸し表
ステップ10 自分自身の棚卸しを続け、間違ったときは直ちにそれを認めた。
夜が来て、眠りにつく前に、その日一日の貸借対照表を作成してみる。1)
AAグレープバイン誌の1946年6月号に「私の日々の棚卸し」という記事が掲載されました。その記事は、毎日17項目の負債〔性格上の欠点〕をチェックする棚卸表を紹介しています。その表を翻訳しました。
これまで僕が少し変更を加えた版(言わば「ひいらぎ版」)を掲載していたのですが、オリジナルに忠実なものに差し替えることにしました。また「Excelのデータが欲しい」というリクエストを何度かいただきましたので、Excelのファイルも添えておきます。
AAの歴史研究をしているワリー・P(Wally P., 1945-)によると、ドクター・ボブや初期のAAメンバーたちはニューカマーにこの表を使うように勧めており、2) アメリカ・カナダ各地のAAのインターグループやセントラルオフィスもこの表を配布していました。
この表にどのようにチェックを付けていくかは解説がありませんから、自分なりの使い方を良いと思います。欠点が見つかればレ点を書き、その埋め合わせがすめば○をつける、というのが一般的な使い方でしょうか。
17個の欠点について、簡単な解説を加えておきます。
- 自己憐憫とは、自分を哀れに思うこと。「私たちは自分の心配ばかりしている」とビッグブックにある3)が、自分を忘れて(self-forgetful)無私無欲になれれば、自己れんびんから解放される。
- 自己正当化とは、自分の考えや行動には正当な理由があると考えること。そこには自分が他の人より優れている、あるいは優先されるべきという考えが潜んでいる。謙虚とはそのように考えないこと。
- 尊大とは、思い上がった行動や態度。慎みや控えめはその反対(これが謙虚だと思っている人も多いが、慎みと謙虚は同じではない)。
- 自己非難とは、自分を責めること。非難されることは(例えそれが自分自身からであっても)苦しいことなので、自分を責めすぎると自己正当化や他責に転化されてしまいがち。ダメな自分を受け入れ、許す寛容さが必要。
- 不正直とは嘘やごまかしがあること。
- 短気〔焦り〕とは、落ちついて待っていられないこと。忍耐とは神のタイミングに合わせ、落ちついて待てること。
- 憎しみとは、まったく好きになれないという感情。愛とは相手に幸せになって欲しいという願い。
- 恨みとは、不公正なことに対して腹を立てること。
- 誤ったプライドとは、他の誰かより自分が何らかの面で優れている、あるいは劣っていると考えること。そうした比較から自由になれれば、飾り気のない(simplicity)人になれる。
- 嫉妬(jealousy)とは、人に関すること。自分より他の人が大事なのではと、人の気持ちや誠実さを疑うこと。信頼することで嫉妬から解放される。
- 嫉み(envy)とは、物に関すること。他の人が持っている何かを自分も欲しがること。その状態では、人に与えるときも惜しみ惜しみ与えることになる。気前よく、期待されるより多く提供することを心がければ、妬みから解放される。
- 怠惰とは働く意欲を持たないこと。また自分の役割や義務を避けること。
- 先延ばしとは、自分に割り当てられた義務や仕事を後回しにし、遅らせること。
- 口先だけとは、本当は信じていない、思っていないことを言うこと。率直とは、偽善的でない、本音であること。
- マイナス思考とは否定的、消極的な考え。プラス思考とは肯定的、積極的な考え。
- 品のない、不道徳な、低俗な考えを、まったく持たない人はいない。
- 批判とは、誰かあるいは何かの悪い点を言うこと。あら探し。優れたところを探すことで、あら探しをやめることができる。
下はそのグレープバインの記事。表の画像はsilkworth.netから得ました。
私の日々の棚卸し
(ミシシッピ州ジャクソンより)
同封〔編集:下に掲載〕した小さなカードは、自分自身に定期的な棚卸しをさせるために、私がデザインしたものです。
ジョン・バーリコーン〔訳注・ウィスキーの別称〕との四十年に及ぶ戦いに敗れ、私はAAと出会いました。AAは本当に私の命の恩人です。私はこのプランを始めてくれた人たち、そして私をAAにつなげてくれた人たちに心から感謝しています。
私たちは十六ヵ月前に四、五人でグループを始めました。それがいま約五十人になっています。ミーティングに出席するととても元気づけられますし、私たちがお互いに「誠実」であろうと努めていることを実感できます。それがこれほど明らかな集団には、これまで属したことがありません。ここには、ごまかしも、言い訳も、弁解も、見せ掛けもありません。ただ、リアリズムだけがあります。それが私の心を高揚させてくれます。
「スリップ」するメンバーによる恩恵もあります。私もグループに入って九ヵ月が過ぎたころ、自己満足に陥り、それでスリップしたのが、この世の不思議です。ですが、それは私に起こった最上の出来事だったと信じています。なぜなら、そのことで私は考えるようになり、初めて明白で正確な自分の姿をつかんだからです。それからというもの、私は謙虚さとは何かを懸命に求めています。今の私の野心は、この先の一生、毎日を成長の道から外れずにいることです。先は長いですが――マーク・W
― AAグレープバイン社の許可のもと再録。4)
(初掲載:2007-8-4)
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