ABOUT AA 4 AAにまつわる迷信・誤解

1990年頃に翻訳出版されていた『About AA 専門家向けニューズレター』の第4号です。


ABOUT AA No.4 専門家向けニューズレター 1984年春期号

「AAグループはいかなる関係ある施設にも、外部の企業に対しても、保証や融資やAAの名前を貸すことをしてはならない。金銭や所有権や名声の問題が、われわれを大事な目的からそらせる恐れがあるからである。」これはアルコホーリクス・アノニマスの第6の伝統である。1)「協力すれど従属せず」という伝統の精神に則り、AAメンバーはアルコール中毒治療センター内で、しばしばAAミーティングを開いている。「AA治療施設」のようなものは存在しないが、「12のステップ」を治療計画の基盤に利用している病院やリハビリ・センターは数多くあり、AAメンバーが患者にAAの回復のプログラムを紹介することは喜んで受け入れられている。今回この号を発行するにあたり、アルコール中毒専門カウンセラーのジョン・ウォレス博士(*訳注参照)に、このフェローシップについての見解を求めた。博士はニューイングランド州にあるアルコール中毒治療/リハビリテーション・センターの理事を務めている。AAについて、アルコール中毒から回復した人たちの確かな事実について、知る人は多いが、なお、依然として神秘のベールに包まれている部分が多い。どういう効果があるのか、宗教組織かそうではないのか、お金はいくらかかるか、等についてである。ウォレス博士は、このような疑問に答えると同時に、多くの誤解を整理し、アルコ一ル中毒の分野に従事する専門家としての観点から、AAのプログラムを解明している。

*訳注 ジョン・ウォレス博士は、Practical Approaches to Alcoholism Psychotherapy(Sh. Zimberg, J. Wallace, Sh. Blume ed. Plenun Press, NY, 1978年)の共編者として高名な人である。

アルコール中毒専門カウンセラーの見解

オハイオ州アクロンでアルコホーリクス・アノニマスが静かなスタートを切って、もう50年になろうとしている。約半世紀間にわたり、アルコール中毒の現場でAAが常に存在していながらも、まだ依然としてAAに対する誤解が多い。この非常に重要な社会運動であるAAの、目的・プロセス・概念・そして活動を把握することは、よほど注意深く、徹底的にAAの出版物を読むか、かなりの期間このフェローシップをじかに体験しない限り、たやすいことではない。

AAにまつわる迷信、AAの概念やアプローチに対する誤解は満ちあふれている。これらの迷信やら誤解を見きわめ、偏見のない、理解ある感度の良いコミュニケーションを計ることは、放って置けない課題である。

まず第一に、AAは禁酒団体ではない。禁酒団体だという意見をよく耳にするが。AAはアルコール飲料を社会で用いることをだれについても非難しているわけではない。このフェローシップのメンバーの断酒2)を重視しているのである。それは、アルコール中毒者は一様に、飲酒も、飲酒時の行動も自制できないことを、アルコール中毒者自らが、再三再四にわたって立証してきたからである。

アルコール飲料を摂らないことは、このフェローシップに初めてつながった人にとって決定的な第一歩ではあるものの、AAの成長のプログラムは飲酒の終結で終わりとなるものではない。単なる「断酒3)」と「ソーバー(しらふで生きる)」の違いをAAメンバーたちは見分けている。断酒していることただそれだけでは、十分充足できる状態にはならない。アルコール中毒者にとってそれではみじめである。とどのつまり断酒4)とは、ソブラェティー(飲まずに生きること)という、もっといろいろな要素が入り組んだ状態に入るための第一歩であり、その「かけ橋」だと言えよう。断酒とは、単に酒を飲まないという意味だけなのに対し、ソブラェティーとは、身体的健康、感情面での充足、社会的関係、家庭生活、仕事、愛情、霊的なもの、これらにアプローチしていくなかで回復中の人間に生じる重要な変化を指しているのである。

回復のプログラムであるAAの「12のステップ」のなかでアルコールのことを論じているのは第一のステップだけである:「われわれはアルコールに対して無力であり、生きていくことがどうにもならなくなったことを認めた。5)」それ以外の11のステップでは、自分が、自分自身とともに、他の人々とともに、そしてその人のハイヤーパワーとともに、(充足した)調和のある生き方を学ぶことに終始している。

AAで中心的な役割を持つものに霊的な成長があるため、このフェローシップを組織化された宗教と混同している人が多い。AAは宗教団体ではない。だが、霊的なものを中心に置く集合体である。このフェローシップは特定の神の概念を信じるようメンバーに要求していない。宗教的儀式がない。だれにも特定の信仰を強要しない。ゆえにこのフェローシップは組織化された宗教ではない。回復へのステップが提案しているのは、正気を取り戻し、アルコールなしで一個人が満足した充足した生き方を見い出す上で(各メンバーがそれぞれ理解する概念の)ハイヤーパワーを信じることが非常に重要な役割を持つということである。ただし、ここで注目すべきことは、AAのハイヤーパワーの概念が、完全に自由で束縛のないことである。

メンバーは、まさに自分で選んで信じたものを信じているし、AAではだれであろうと、メンバーにほかのものを信じるようにと言うことはできないのである。

AAに対する一層の誤解は、AAがアルコール中毒についての単純素朴な疾病概念を支持しているというものである。これは理解に苦しむ誤解である。なぜならAAはまさにその発端の頃から、この病気が把渥し難く、複雑で、多次元にわたるものという概念を持っていたからである。アルコール中毒の肉体面、精神面、感情面、霊的な面に注目することで、現代の医学、精神医学、心理学における――アルコール症だけでなく他の疾病についても――まさに最近の進歩にAAは先行してきた。行動医学という最近浮かび上がってきた研究分野は、さまざまな病気に対して心理学と医学を統合させて関わっていこうという、注目すべき試みである。だがAAは1935年にすでに、肉体面(アルコールに対するアレルギー)と精神面(アルコール強迫観念)が交わってこの病気が出現し、続行するという心身医学6)の見解をとっていた。幾年にもわたってさまざまな研究分野で、現代20世紀の生物科学の注目すべき成果が、アルコール中毒の解明に適用されてきた。これら、神経化学、神経薬理学、神経解剖学及び行動に関する科学的進歩は、AAが早くから強調してきた心身の関連性と完全に一致しているもので、大いに歓迎される。さらに、これらの科学的な成果は、人類がこうむる他の多くの病気に光明をもたらしてきたのと同様に、アルコール中毒にも光明をもたらす希望が出てきた。

AAは心理学、精神医学の学識に敵対していると考えられているのは遺憾である。AAメンバーのなかには、お粗末に仕込まれた専門家や、妥当な教育を受けなかった専門家の手にかかって、妥当でない治療を受けたことがある者もいることと思う。しかしながらこの不幸な状況も、専門分野の教育や大学院のカリキュラムがアルコール中毒という病気の実体に視点を向けるようになり、正確で感度の良い理解を持った専門家の数も増えつつあり、今や急速に変化してきている。AAは心理学的にも非常に洗練されたフェローシップである。――これについては強硬な反対意見があるが、AAの概念ややり方の多くは、最高の実践されている心理学である。

AAではメンバーたちは心理面の要素である、恨み、自己憐びん、自己中心癖、非現実的な高望み、欲求不満、ストレス、性的関係と愛情関係、自尊心、恐れ、不安、罪悪感、誇大観念、我意、憂うつ、落ち込み、安定感への欲求、ねたみ、他の人に対し権力的になること、他人に対する支配と優位、経済的破局の恐れ、等々の重みを認識している。心理的要因を重要視していないと思われているグループにしては、このような目録はあまりにも長いものである! AAは心理的要素に没頭しているばかりではなく、AAの活動は明確に賢明に練られた心理的な方法である。例えば、AAグループミーティングは、健全で強力で積極的な人間関係の特質を明らかにする社会心理学的方法の教科書的実例だと言える。そこには、包み隠しのない正直さ、信頼を置いたコミュニケーション、他の人に対する思いやり、尊敬、配慮、自分及び他の人の成長と幸福への献身、他の人との共感と一体感、がある。その他の多くのAAの方法やステップも、アルコール中毒からの回復に際しての個人と人間関係双方の心理的プロセスの重みを、時には暗黙の内に、時には明示的に認めている。

AAは、人にアルコール中毒者であることを認めさせ、人前でアルコール中毒であると公言しなければならない、との誤解が一部にある。AAはだれに対しても何かをするよう命じることはないのはもとより、AAは何についても診断を下すことはなく、この誤解は全くの見当はずれである。専門家は病気の診断を下す。AAメンバーはお互いがソブラェティーを保つよう助け合う。「メンバーになるために要求されることは、酒をやめたいという願望だけである」7)これはAAのプレアンブル(序文)の一文である。AAメンバーの多くは、多分ほとんどだろうが、自分の判断で自分をアルコール中毒者だと言っている。だからといってこのことはグループの帰属条件ではない。AAの回復のプログラムのまさに第一のステップはアルコールに対して無力であると認めることである。しかしながら、それさえ回復へのステップの提案であり、命令ではない。更には、ステップのどこにも、自分をアルコール中毒者だと診断しなければならないとも、他の人からそう診断されたのを受け入れろとも、言っていないのである。

最後に、アルコール中毒者がアルコール中毒から回復するには、アルコールを断つことが必須だとするAAの立場は、経験的基盤のない、全く観念論的なものだと確信している人たちが時たまいる。更に、こういう人たちは、AAがこの点で誤っていることは現代の医学で立証されており、アルコール中毒者に、正常な、コントロールが効く、問題を生じない飲み方を教えられるものと信じている。あらゆる迷信や誤解のなかでこれほど危険な可能性を持ったものはない。もし、アルコール中毒にかかった人がこの迷信を心に抱いたら、重大な、さらには悲劇的な結末に至る危険を自ら冒すことになるだろう。

アルコール中毒者がアルコールを断つことについてのAAの信念は、観念論的なインスピレーションから出た青天のへきれきではない。この現実の世の中で経験し見てきたことから生じたものである。夢もこっはみじんに砕かれ、体はぼろぼろになり、アルコール関連の身体疾患にかかり、仕事を失い、家庭は崩壊し……、これらの耐えがたい悲劇を直接見てきたことから生じたものである。アルコール中毒者のアルコール継続摂取と、アルコール中毒が進行している人の人生が、ついには必ず否定的な結末に終わることの相関関係をAAは早くから認識していた。実際にAAの信念は小さな村、町、郊外、スラム、大都会の現実の社会に住む、文字通り何十万人という男女との直接の関わり合いから生まれたものである。AAメンバーは、まだ飲み続けているアルコール中毒者としても、ソプラェティーを続けるアルコール中毒者としても数多くの直接的体験をしている。コントロールがしっかり効いた、全く問題のない飲み方を経験したという報告を彼らはしていない。彼らが伝えているのは、数え切れないほどのアルコール中毒者や家族の生き方が、メッセージを受け、飲むのをやめ、回復の12のステップのプログラムを始めたとき、想像もつかないほど向上している、ということである。

アルコールを断つことに反対する科学的報告は、客観的な観点からいっても、とるにたらないものである。責任ある道義的な専門家が世間に、アルコール中毒の治療法が成功したと発表するには、その数があまりにも少な過ぎる、という簡単な理由からである。

いまや、AAにまつわる多くの迷信や誤解をあはき、捨て去る時である。AAは何らかのかたちでアルコール中毒者と関わりを持つ専門分野の人々との、オープンな、信頼ある、ゆがみのない接触のチャンネルが必要である。更には、これらの専門分野の人々も、アルコホーリクス・アノニマスとの同様のコミュニケーションのチャンネルを必要としている。そのようなチャンネルをつくること自体が、一部の人たちにとっては骨の折れることかもしれない。だがわれわれの使命は、それを放って置いては済まされないほど重大なものである。要するに、AAと専門分野の人々との、明せきで、感度の良い、正確なコミュニケーションがあってこそ、まだ苦しんでいるアルコール中毒者やその家族が救われるということである。

専門分野の専門家、職業人たちが、もっと正しくAAを把握しようと努めることは重要であるが、それと同時にAAメンバーたちにとっても重要なことは、AAの考え方、やり方、活動を、明確に、効果的に伝えようとする努力である。AAとほとんど接触がない専門家は「ゆだねる(おまかせ)」という言葉が何を意味しているのか知らない。「第一のことは第一に」とか「ドライ・ドランク」のような概念も、理解することができないだろう。AAメンバーは非常に長い時間をかけて、メンバーどうしで話し合っており、スローガンやステップの意味をとりたてて説明する必要などめったにない。AAメンバーがメンバー以外の人と話をする際、忘れてならないことは、何度も話し合いを重ねた上で初めてAAの考え方がピンと伝わるようになるということである。

かいつまんで言えば、コミュニケーションこそが、まだ苦しんでいるアルコール中毒者に手をさしのべる上でのすべての者の共同責任なのである。われわれみんながお互いをもっと良く理解しようと努力すれば、お互いがもっとはっきりとあるがままに見られるようになるだろう。これこそが、至るところでのアルコール中毒者の援助につながるのである。


About A.A. a newsletter for professional men and women
Spring 1984 “Myths and Misconceptions About Alcoholics Anonymous—An Alcoholism Counselor’s View”


  1. 現在の翻訳は「AAグループはどのような関連施設や外部の事業にも、その活動を支持したり、資金を提供したり、AAの名前を貸したりすべきではない。金銭や財産、名声によって、私たちがAAの本来の目的から外れてしまわないようにするためである。」 []
  2. abstention. []
  3. dry. []
  4. dryness. []
  5. 現在の訳は「私たちはアルコールに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた。」 []
  6. psychosomatic. []
  7. 現在の翻訳は「AAのメンバーになるために必要なことはただ一つ、飲酒をやめたいという願いだけである。」 []

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Posted by ragi