アレルギー
アレルギー — allergy
AAのテキストにおいて、アルコールに対する過敏反応を表現するために使われる用語。
現在ではアレルギーという用語は免疫 反応によって引き起こされた障害を指して使われている(狭義のアレルギー )。このため免疫の病気ではないアルコホリズムの説明にアレルギーという用語が使われることに違和感を持つ人は少なくない。
アレルギーという用語はオーストリアの小児科医でウィーン大学の教授だったクレメンス・フォン・ピルケ (1874-1929)が1906年に論文に発表したのが最初である。元来は、外来性の物質に対して生体がそれまでと違った反応性を示すことを指していた(広義のアレルギー)。
アルコホリズムの場合、この「外来性の物質」はアルコールである。「それまでと違った反応」とは、より多くの酒を求める強い欲求(渇望)である。渇望はアルコホーリクにしか生じないアレルギー反応であり、飲酒のコントロールを失わせる原因だと考えられている。
免疫によるものであるかどうかにかかわらずアレルギーは身体的な現象であり、精神的なものではない。従って、精神・心理的な治療によってこの過敏反応(渇望)を抑えることはできない。アルコールに対するアレルギーという概念を受け入れることで、飲酒のコントロールを取り戻すことを諦め、努力の方向性を断酒の実現と維持に向けることができるようになる。
アレルギーという用語および概念は、AAの初期からの支持者であったシルクワース医師の意見を採用したもので、彼はこれを身体的過敏性(physical sensitivity)とも呼んでいた。1) また、中国語のビッグブックでは、アレルギーを過敏性反應(繁体字版)・敏感的反应(簡体字版)と訳している。
ビル・Wは、身体のアレルギー(the allergy of the body)と精神の強迫観念(the obsession of the mind)は、ステップ1に取り組む上で絶対的に必要なキーワードであるとしており2)、ビッグブックだけでなく、『12のステップと12の伝統』や『AA成年に達する』でも繰り返しこれらの用語を使っている。
マーク・ケラーらによる『アルコール辞典』では、アレルギーをこのように説明している(抜粋):
allergy アレルギー 〔ギリシャ語allos(他の)+ergon(作用)〕 免疫学では最初の接種または治療が原因で,その後同じ病原菌または血清による接種や治療を受けた場合に見られる感受性の変化をいう.一般の医学においては,食物,毛髪,花粉や繊維などのような物質に対して,特別に高い感受性を持っている状態をいい,これによって身体的な障害が起こり得る.
ALCOHOL ALLERGY アルコールアレルギー A.A.の歴史の初期の段階においては.その創始者達は支援者である医師の意見により次のような理論を採用していた.それは,アルコール症は「身体のアレルギー」であるというもので,暗にアルコールを渇望し飲酒の抑制ができなくなるという現われ方をする可能性もあるアルコールに対する有害な過敏性を意味している.これはA.A.においては,しばしば教義ともなった.3)
参照:
・ビッグブックのスタディ (12) 医師の意見 3
・ビッグブックのスタディ (14) 医師の意見 5
・ビッグブックのスタディ (16) 医師の意見 7
・ビッグブックのスタディ (17) 医師の意見 8
・ビッグブックのスタディ (18) 医師の意見 9
・ビッグブックのスタディ (19) 医師の意見 10
・ビッグブックのスタディ (20) 医師の意見 11
・ビッグブックのスタディ (21) 医師の意見 12
- AACA, p.102.[↩]
- AACA, pp.19, 102, 104-105, 108, 245.[↩]
- マーク・ケラー/マイリ・マコーミック(津久江一郎訳)『アルコール辞典 改定第二版』, 診断と治療社, 1987, p.63[↩]
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