12のステップ

12のステップ — Twelve Steps

12 steps
from Pintarest

AAにおけるアルコホリズムからの回復のプログラムであり、短い12個の文に要約されている。その字句ではなくプログラムそのものを示す場合が多い。1939年に出版されたAAの基本テキスト『アルコホーリクス・アノニマス』(通称ビッグブック)で成文化された。12ステップとも。

AAの共同創始者であり、ビッグブックの主要な著者であるビル・Wによると、12ステップの基本概念は、オックスフォード・グループウィリアム・ジェームズウィリアム・D・シルクワース、さらにカール・ユングに由来しているという。1) 2) さらに、AAはこれらと自分たちの経験をもとに12ステップを作ったのであり、古くから実績のある原理をアルコホーリクが受け入れられる形に整え直しただけであるから、そこに未知の原理を見つけ出そうとしても無駄に終わるだろうと述べている。3)

これらのうち、シルクワース医師の考えがステップ1に、ウィリアム・ジェームズおよびカール・ユングの考えがステップ2に、オックスフォード・グループの教義がステップ3~12に反映されている。

ビルは、12ステップの原型となるプログラムを1934年に友人エビー・Tから教えられてアルコホリズムから回復した。彼がそれを他のアルコホーリクに伝えることでAA共同体が成立した。1938-39年にビッグブックが書かれる以前は、回復のプログラムは口伝くでんで渡されていた。ビッグブックによって12ステップが成文化し、解説が加えられたことで、プログラムが希釈されたり、歪曲されたりすることを防ぎ、距離や時代や言語の障壁を越えてメッセージを伝えることが可能になった。4) アメリカでも、その他の多くの国でも、ビッグブックが翻訳出版された後にAAが飛躍的に発展している。5) これは、12ステップを伝達する手段としてビッグブックを用いることが効果的であることを示している。

ビル・Wは講演の中で、12ステップをこう要約した:6)

    1. アルコホリズムを認めること
    2. 性格の分析とカタルシス
    3. 人間関係の調整
    4. 何らかのハイヤー・パワーへの依存
    5. 他のアルコホーリクへ働きかける

AAは12ステップはあくまでアルコホリズムの回復のプログラムだとしており、その他の問題に適用できるという保証を与えることを避けているが、アルコール以外のアディクションや、アディクション以外の強迫行動に12ステップを適用するさまざまなグループが生まれている。(e.g. アラノン、NAなど)

アメリカ精神医学会(APA)の APA Dictionary of Psychology は、12ステッププログラムを以下のように解説している。

Twelve-Step Program
a distinctive approach to overcoming addictive, compulsive, or behavioral problems that was developed initially in Alcoholics Anonymous (AA) to guide recovery from alcoholism and is now used, often in an adapted form, by a number of other self-help groups. The twelve-step program in AA asks each member to (a) admit that he or she cannot control his or her drinking; (b) recognize a supreme spiritual power, which can give the member strength; (c) examine past errors, a process that is carried out with another member who serves as sponsor; (d) make amends for these errors; (e) develop a new code and style of life; and (f) help other alcoholics who are in need of support. Variations of this model also exist for drug abuse and addiction, gambling addiction, and other problems.7)


12ステップ・プログラム
依存症、強迫性あるいは行動上の問題を克服するための独特のアプローチで、当初はアルコホーリクス・アノニマス(AA)がアルコホリズムからの回復を導くために作ったものであるが、現在ではその他の数多くの自助グループにおいて、それぞれに適応させた形で使われている。AAの12のステップは、そのメンバーに対して以下のことを求めている:

    1. 飲酒をコントロールできないことを認める;
    2. 究極の霊的スピリチュアルパワーが、自分に強さストレングスを与えることができることを認める;
    3. 過去の過ちを分析する――スポンサーの役割をしてくれるもう一人のメンバーと一緒に行うプロセス;
    4. それらの過ちについて埋め合わせを行う;
    5. 人生の新しい規範とスタイルを成長させる;
    6. サポートを必要とする他のアルコホーリクを手助けする。

薬物の乱用や嗜癖、ギャンブル嗜癖、その他の問題それぞれに、このモデルのバリエーションが存在する。(拙訳)

参照:
12のステップ

アルコール・ドラッグ用語集:
12のステップ


  1. AACA, p.244.[]
  2. AA, Three Talks to Medical Societies by Bill W., Co-founder of AA, AAWS, p.10 — 「アルコホーリクス・アノニマス、その始まりと成長」.[]
  3. ibid., p.25.[]
  4. ウィリアム・ホワイト(鈴木美保子他訳)『米国アディクション列伝 アメリカにおけるアディクション治療と回復の歴史』, ジャパンマック, 2007, p.151.[]
  5. BB, p.xxix — 日本では飛躍的発展は起きず、ゆっくりとひろがった。[]
  6. AA, p.29 — 「アルコホーリクス・アノニマスの基本コンセプト」.[]
  7. APA, “twelve-step program”APA Dictionary of Psychology (apa.org), 2019/3/7.[]
同義語:
12ステップ
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2024-08-29

Posted by ragi