おおもとの深いところに存在するもの
ビッグブックは神(の意志)は、私たちのおおもとの深いところに存在すると述べています。1) それに合わせて、この図では、神を自分(self)の真ん中にもってきてあります。
ジョー・マキューによる12ステップの説明に触れたことのある人は、これに似た図を見たことがあるでしょう。彼が作った施設向けのプログラムであるリカバリー・ダイナミクスの資料にも2)、また彼がAAメンバー向けに書いた12ステップの書籍にも3)、ジョー・アンド・チャーリーのビッグブックスタディというAAイベントで配布された資料にも、これとほぼ同じ図が掲載されています。(いくつかのバリエーションがあり、この図はそれらを参考にこのスタディに合わせて新たに作図したもの)。
ジョーによれば、これは彼が考えたものではなく、ビッグブックに書かれていることです。
ビッグブックの全編を通じて、ビル・ウィルソンは人生の三つの次元について論じている。
- スピリチュアルな次元――私たちの核
- 精神的次元――知的生活(私たちの心の活動)
- 物質的・社会的次元――人生でもっとも見えやすい部分
人生をこの3つが同心円で構成されていると見れば、ほとんどの人は、まず見えやすい部分であるいちばん外側の円――他者へのふるまいと他者との関係に焦点を絞る。外側の円を構成するのは、仕事、金銭、健康、家庭と家族など、私たちがかかわるすべてのものである。「こういうものが全部手に入れば、私は心から幸福になれるのに」 多くの人はこんなふうに考える。自分の外側が良くなれば内側も良くなるというのである。しかし、自然界に存在するものはすべて、内側から外側に向かって成長する。これは新しい原理ではなく、偉大な宗教の書に共通する生き方の原理である。AAが作ったのではない生き方の原理である。4)
私たちが自分(self)として意識している精神の活動が、図に水色の輪として描かれています。これが精神的(mental)な次元です。私たちが、精神とか心と呼ぶものです。
そして、私たちの精神よりも深いところには霊的(spiritual)な次元があり、そこに神が存在します。しかし、神は障害物によって覆い隠されているために、私たちにはその存在が意識できず、自分と神が触れ合うこともできなくなっています。
さらに私たちは、物質的・社会的なものに取り囲まれて生きています(黄色い輪)。物質的(physical)とは金銭や財産のことであり、社会的(social)とは人間関係や社会的地位のことです。これらは人間が生きていくのに必要なものであるだけに、私たちの関心は、これらの外側のものに向かいがちです。
私たちは、外に向きがちな関心を自分の内に向け、おおもとの深いところに存在する神との関係を取り戻さなくてはなりません。
PowerPointの図で立体っぽく見える図を描いてみました――残念なことにこの「立体っぽい」図は「どうしても立体に見えない」というご指摘をしばしばいただいたので、さらに「立体っぽく」描き直してみました(2024年1月)。描き直す前の図は、このページの下の方にあります。
スピリチュアルな次元(緑)、精神的な次元(青)、物質的・社会的な次元(黄)は前の図と同じ色で描いてあります。内なる神の存在は、障害物に覆われて意識しづらくなっています。
欠落の存在が感じられなくても、欠落そのものが消失するわけではありません。私たちが自分(self)と見なしている精神には、真ん中に大きな穴が開いているのです。内面に大きな虚無を抱えて生きるのは、たいへん虚しいことです。
唯一、神にこの穴に入ってもらうことだけが、全体性を達成する手段なとなります。
これが私たちが目指す回復の理想を描いた図です。実のところ、神様は私たちが生れたときからずっとそこにいるのです。ただ私たちが障害物を作って神を拒否してきただけなのです。だから、内面にある障害物を取り除くという、全体性を取り戻す旅をステップ3から始めるのです。
こちらは描き直す前の図です:
被参照記事:
・ビッグブックのスタディ (87) 私たち不可知論者は 14
・ビッグブックのスタディ (94) どうやればうまくいくのか 6
・ビッグブックのスタディ (96) どうやればうまくいくのか 8
・ビッグブックのスタディ (102) どうやればうまくいくのか 14
・ビッグブックのスタディ (104) どうやればうまくいくのか 16
・ビッグブックのスタディ (106) どうやればうまくいくのか 18
・ビッグブックのスタディ (108) どうやればうまくいくのか 20
・ビッグブックのスタディ (111) 行動に移す 3
・ビッグブックのスタディ (113) 行動に移す 5
・ビッグブックのスタディ (116) 行動に移す 8
- BB, pp.80-81[↩]
- The Kelly Foundation(セレニティ・プログラム訳)『12ステップ・ガイドブック』, 2013, セレニティ・プログラム, pp. 55, 101, 114, 121, 135[↩]
- ジョー・マキュー(依存症からの回復研究会訳)『ビッグブックのスポンサーシップ』, 依存症からの回復研究会, 2007, p. 81, 155, 176[↩]
- ジョー・マキュー, p.160[↩]
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