ビッグブックのスタディ (51) 解決はある 4
ビッグブックが書かれた理由
29ページからは、なぜビッグブックという本が書かれたかの説明があります。
AAメンバーたちは、アルコホーリクに12ステップという解決法を伝えることに熱意を持って取り組んでいましたが、仕事や家族のための時間を考えれば、AAのために割ける時間は多くはありませんでした。ビル・Wやドクター・ボブはフルタイムでAAのことに取り組みましたが、それによって二人とも大変な経済的苦境に陥りました。解決法を求めているアルコホーリクは世界中に無数にいるはずなのに、伝える側が使える人的資源は僅かでした。対面で12ステップを伝えていくというやり方に限界があるのは明らかでした。彼らは、より多くの人に回復のメッセージを届けるにはどうするべきかを考えました。
その結果、彼らは、アルコホリズムという問題に対して自分たちが理解したことを書き綴った本を出版することにしました。彼らの経験と知識のすべてをその一冊の本に詰め込みました（p.29）。それが私たちが手にしているビッグブックです。
ビッグブックの成り立ちについては第7回で、また、ビッグブックの出版に大きな貢献をしたヘンリー・Pについては第27回で取り上げました。
三つの疑問
さて、30ページの段落です：
読者は、たかが飲酒のために、私たちがみな、なぜ、これほどまでにひどくなってしまったのかと疑問を持たれることだろう。また、それほどまでの絶望的な精神と身体の状態から、私たちがどうやって、またどうして、専門家の意見に反して回復できたのかと興味をお持ちの方もおられるはずだ。もしあなたが何とか酒をやめたいと思っているアルコホーリクなら、「ではどうすればいいのか」という答えを求めておられるだろう。1)
この段落には、三つの疑問が提示されています。
最初の疑問は、「たかが飲酒のために、私たちがみな、なぜ、これほどまでにひどくなってしまったのか」です。世の中の人のほとんどは、飲酒のせいでこれほど不健康になることはありません。なぜ、アルコホーリクと呼ばれる一部の人たちだけが、そうなってしまうのか、という疑問です。これはステップ1の問題にあたるものです。当然その答は、アルコホーリクには身体のアレルギーと精神の強迫観念があるからです。
二番目は、「それほどまでの絶望的な精神と身体の状態から、私たちがどうやって、またどうして、専門家の意見に反して回復できたのか」です。絶望的な精神と身体の状態とは、ステップ1の問題（アルコホリズム）のことです。それに対する専門家の意見としては「慢性のアルコホーリクは大方死んでいく」というのが医師の間の通説でした（p.xxxvi (36)）。ですからこれは、その通説に反して、なぜ彼らは回復できたのか、という疑問です。シルクワース医師は「その人に霊的な変化が起これば回復できる」と述べました（第17回）。彼らは12ステップに取り組んで、霊的体験（あるいは霊的目覚め）を得たことで、回復しました。しかしながら、シルクワース医師は、霊的変化をもたらすにはハイヤー・パワーが必要だとも示唆しています。したがって、この疑問に対する答は、ハイヤー・パワー（神）の力によるもの、ということになります。これがステップ2で私たちが信じるべき解決です。
三番目は、「ではどうすればいいのか」です。これは、ステップ3～12の行動のプログラムを意味します。
この段落は、問題・解決・行動のセットを表現しているわけです。
三つの疑問に答える
こうした疑問に詳しく答えるのが、この本の目的である。1)
ビッグブックはこの三つを説明するための本であると言っています。さらに、
私たちが何をしたのかを、まず述べるつもりだ。細かな話に入る前に、私たちの考えの要点を幾つかまとめてみることにしよう。1)
We shall tell you what we have done. Before going into a detailed discussion, it may be well to summarize some points as we see them.2)
この「まず」という言葉は明らかに不要です。彼らは、どのように各ステップを行ったのか第三章以降で詳しく伝えてくれます。しかし、その詳細の前に（第二章で）いくつかのことを、かいつまんで述べておいた方が良さそうだ、と言っています。実際に、第二章のこれ以降は、問題（ステップ1）と解決（ステップ2）についての概説が行われています。
というわけで、31ページから39ページの14行目までが、ステップ1の概論になっています。次回以降はまたステップ1の話が続きます。
- AAメンバーたちは、直接会うことのできないアルコホーリクに12ステップを伝えるためにビッグブックという本を書いた。
- ビッグブックは、問題（ステップ1）・解決（ステップ2）・行動のプログラム（ステップ3～12）について、第三章以降で詳しく説明してくれる。
- その前に第二章では、ステップ1とステップ2について概説している。